背後から聞き覚えのある声がする
とても、聞き覚えのある声が



じゃあ、僕が目覚める前に壱さんは鍵を手に入れていたんですね。





そうじゃのう。





じゃあどうして言ってくれなかったんですか。





完全にタイミングを逃してしまったんじゃ。
あの時は蓮殿も混乱しておったし、それどころじゃなかったじゃろ?





う・・・。





もう話は済んだかよ?
正直俺様は出られさえすれば他の奴の罪だか何だか知んねーけど、興味ないんだわ。





・・・。
ちょっと待ってください、今整理しますね。





何をです?





今わかっている罪の割り振りについてです。
僕の【強欲】、暁さんの【傲慢】に、椿さんの【怠惰】、壱さんの【色欲】、・・・そして亡くなってしまった卓さんの【憤怒】、狂ってしまった女の子の【暴食】・・・。





そうじゃな。





あとは兄上の【憂鬱】・・・・、残ったのは【虚飾】。
つまり、菖蒲さんは【虚飾】ですね。





―――。





そう、彼女が虚飾だよ。


背後から聞き覚えのある声がする
とても、聞き覚えのある声が



兄・・・上・・。





んー、みんなお揃いで。
試練は楽しかった?


くすり、と兄上は微笑する
そのまま兄上が手を正面にかざすと、ズズズズと何もないところから剣が現れた



!


その剣を握った兄上の目からは、確かな僕らに対する殺意の感情が読み取れた



・・・。





・・・兄上。
やっぱり兄上は殺しあうことを望むんだね・・。
脱出するには鍵を手に入れれば済むじゃないか。





だめなんだ、それじゃダメなんだよ漣。


僕の言葉に呆れたように深いため息をつく
そして、兄上は僕をまっすぐに見つめた



ここから出るなんてどうでもいいんだよ。
俺はただ、誰かを解体したいだけなんだ。





は・・?





俺は物心ついた時から前世の記憶は戻ってた。
だから前世で自分の兄弟を屠殺してから・・・自分の親も、家族も、解体したくて、解体したくて仕方なかったんだ。





っ・・・!?





だからね、蓮。
まず俺がこの世で最初に解体するのはお前と決めていたんだよ。
俺を殺す人物であると予言された赤い目の男・・・。





・・・っ。





漣-、お前をね。





はっ、お前、いい兄貴持ってんじゃねーか。
かなり頭の狂った兄貴をな!!





俺が狂ってる?
なら、そこでずっと笑ってる人もでしょ。


兄上はゆっくりと指をさす



え・・・・?





ふふ、ふふふふふふ。


まさか、この人
この人は



菖蒲さんが・・・?





そう、菖蒲さんだよ。
彼女だって最初から記憶は戻ってる。





隠していてごめんなさいね、だって性分が嘘つきなんですもの。





な・・・!?
記憶が戻ってたなら自分の罪もわかっていたんじゃ!!
どうして教えてくれなかったんですか!?





あら、敵に手の内をすぐに明かすと思って?
のちに殺して差し上げようと思っている方々に、教えてなんの得があるのですか?





こ、殺す!?





菖蒲さん、どうして!!





ただ殺して食ってやりたい。
それだけですわ。





は!???
食う!?





ええ、私も前世の執念が残っておりまして。





前世・・・。





でも私は脱出したくないわけではないの。
実はちゃんと保険に試練を受けて鍵は持ってるわ。
由利さんを犠牲にして。





由利殿・・?





ええ、あの暴食の少女。
由利さんよ。


そういって菖蒲さんは恍惚とした表情で語り始めたのだった
つづく・・・
~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技
No.1 漣 強欲
『青ひげ』
???
No.2 馨 憂鬱
『子供たちが屠殺ごっこをした話』
想像したものを具現化(?)
No.3 壱 色欲
『ながい鼻』
心を読み、真贋を色で見分ける(?)
No.4 菖蒲 虚飾
『???』
人形を使った何か(?)
No.5 卓 憤怒
『鍛冶屋と悪魔』
千里眼
No.6 暁 傲慢
『夜うぐいすとめくらとかげの話』
特殊な声を持つ
No.7 椿 怠惰
『夏の庭と冬の庭』
水を操ることができる
No.8 由利 暴食
『餓死しそうな子供たち』
???



No.1





No.2





No.3





No.4





No.5





No.6





No.7





No.8


