


シャムロックは!シャムロックはどこに行きましたの!?





す、すみません……。見失ってしまったようです





この大バカ者!!





ダリア様!一体何を!!





何が「見失った」ですか!!これだけ軍も巻き込んでキーファーまで借りたというのに!もしお父さまに知れたら……





何が知られたら困るのかな、ダリア?





あっ…………





……プルートシュタイン殿下





やあ、ローテ殿だったかな?見回りの最中かい?





…………ええ、まぁ





そうかそうか。だがもう遅いし、君達は早く休みなさい。私が許可しよう





いえ、しかし……





それとも、私が宿舎まで送っていこうか?





い、いえ!滅相もない!!





はっはっは!冗談だ。気を付けて帰りたまえよ、最近は賊が出回ってるらしいからな!





…………失礼します





ダリアは、私と一緒に来なさい





…………はい





お父さま……私はただ……





黙れ。泣き言など聞きたくはない





まさか、自分のしたことが分からないわけではあるまい?これだけの軍も動かして、何をしていたんだ?





…………これですわ





怪盗……シャムロック





お父さまの耳に届いているでしょう?近頃貴族の宝石を盗み続ける盗賊のことを





私はそれを捕まえたかったのです。蛮行を続ける卑しい賊めを!





…………捕まえて、どうするつもりだ?





え?勿論しかるべき所に突き出して…………





エーデルシュタイン家か?





…………どうしてそれを?





お前の部屋を見させてもらった。ご丁寧に机の上に置いてあったからな。一瞬で分かってしまった





ならばお分かりでしょう!エーデルシュタイン家の養子が、クリエ・エーデルシュタインこそが怪盗シャムロックなのです!一刻も早く奴を捕らえないと……





…………ダリア。私から言えることはひとつだけだ





忘れなさい





えっ……





考えてもみなさい。仮に怪盗シャムロックを捕らえてエーデルシュタイン家に突き出したところで、認めるはずがないだろう。この国で最も権力を持つ貴族だ。簡単にもみ消すだろうさ





あまりエーデルシュタイン家を刺激してくれるな。怪盗シャムロックのことは忘れなさい。いいね?





そんな!納得できるはずありませんわ!!そもそも――――





くどいぞ。お前の個人的な恨みで我がプルートシュタイン家を脅かすなといってるのが、まだ分からんのか!





……………………





……おやすみなさい、お父さま





ああ。お休み、ダリア





悔しい……





ここまで追い詰めたというのに……なのに忘れろなんて、悔しいに決まってます





宝石も盗まれてしまったし、もう私に手は残っていません……。けど、まだきっと方法が……





夜更かしは感心しないね、お嬢さん





えっ――――





きゃっ……!





悪いけど、今日の記憶は消させてもらったよ





君はあの時、神の実験成果を間近で見れたんだ。もう消しちゃったけどね





君に怪盗シャムロックの正体を覚えてもらわれるとこちらも困る。今度こそ、お休みなさい、ダリア・ブルートシュタイン…………





……随分と荒らしてくれたようだな





まったく、とんだじゃじゃ馬娘だ。そう思わないかね?





……………………





まったく、本物の宝石をおとりに使うとは……。我がプルートシュタイン家の象徴だというのに





ク……クリ……エ…………





クリ……エ……ニゲレタ……ノ?





しかし、この無鉄砲さは誰に似たのだか。こんなおぞましい者まで使うなんて





マッテテ……





ボクモ……ムカ……ウ……カラ





ヤクソ……ク……シタカラ





イキテ……マタ……アウッテ………





………そして若者よ。君は誇りに思いなさい





このパルメ・プルートシュタインの手によって散れることをな





クリ……エ……ネエ――――


