新たな空間に出た瞬間、カレンは佳穂の体をやや乱暴に引っ張った。
新たな空間に出た瞬間、カレンは佳穂の体をやや乱暴に引っ張った。



危ない!!▼





きゃっ


まるで、自分たちが出てくるのを待ち構えていたかのように、真横を衝撃波が走った。
大きく穴の開いた空間はバチバチと音を立てながら、少しずつ修復されていく。
カレンは、佳穂を庇うように前に立って剣を構えた。



おや、かわされてしまいましたか。





残念。


学ランの少年と金髪の鬼が佳穂たちの前に立ちふさがる。
その奥には、友人たちの姿が見えた。



佳穂!?大丈夫か!!





待ってね、佳穂ちゃん。今、私がそいつぶっ飛ばすから!





なっつ、負けちゃう。絶対ダメ。





みんな…!!


みんなのもとへ向かいたいが、先程の二人が敵意をむき出しにしてこちらを睨んでいる。



一度出直しましょう、蓮。
この人数では不利です。





わかった。まだゲームは始まったばかりだしね。


金髪の鬼はにこりと笑うと、学ランの少年と共に、突然現れた霧の中へと姿を消してしまった。



何だったんだよ…あいつら





現れて、すぐ襲ってきた。





次出てきたら、やっつけてやるんだからっ





大丈夫!?怪我してない?





俺は大丈夫だけど、リズが…





このくらい大丈夫よっ。
ご主人はもう少し自分のことを心配してよね。


櫂斗の後ろにいる赤髪の少女は、服についている埃を払って強がるように腕組をした。



他の お二人は ご無事ですか?▼





怖かったけど、大丈夫だよ~





大丈夫~。鬼の人、かっこよかった~





薫ちゃんだけ、すごく呑気じゃない?





ごめん…私がしっかりしていないせいで、夏が危ない目に…





シュリーは何も悪くないって!
気にしないくていいよ。





薫が無事ならいいけど…
見惚れてそのうち怪我しそう…





えー?
私はモカちゃん一筋だよ??


どうやら、それぞれのパートナーも大きな怪我をしているようではなかった。
落ち着くと、櫂斗のパートナーであるリズが襲われた理由を説明し始めた。



彼らが襲ってきたのには、ちゃんとした理由があるわ。





パートナーやプレイヤーのHPがゼロになった時、私たちはこの世界で姿を保っていられなくなって消滅する。これがゲームオーバー。





その時に宝石をドロップするの。この世界における私たちの命の結晶よ。
それが経験値となって、手に入れた者のステータスを上げるわ。





プレイヤーやパートナーの宝石は、通常の敵の宝石よりも多くの経験値を含んでいる。
だから、積極的に狙いに来るの。





でも、プレイヤーはその宝石を手に入れる度に少しずつ心を蝕まれてしまう。
相手を殺して力を手に入れる。
人を殺している事に変わりはないから。





だから 私たちは 存在しているの▼
プレイヤーが 暴走しないよう 護るために▼





レべリングの快感によって生まれる、殺人衝動に呑み込まれない様にするために。





でも、さっきの鬼は完全にプレイヤーに手を貸していなかったか?





パートナー全員が平和を望んでいるわけではないの。殺戮に走る者も沢山いるわ。





パートナーも全員善人ってわけじゃないのね





ええ。でもあの鬼はまだマシよ。
言葉が通じるもの。





一番危険なのは、パートナーとプレイヤーの両方の精神ステータスに干渉できる存在。
人格を破綻させて完全な操り人形にしてしまう。





人格を破綻させる能力……


重苦しい空気に包まれる中、佳穂はあることに気がついた。



そういえば、愁弥は?


真っ暗な闇の中。
目の前にいるのは、紫色の瞳が怪しく光る不気味な男。



どうしたらいいんだ……?


男はゆっくりと愁弥に近づき、静かに手を上げた。



えっ





………。


