俺と彩佳は羽柴の家から自宅へ帰ろうとしていた。
俺と彩佳は羽柴の家から自宅へ帰ろうとしていた。



残念だったな、顔見れなくて。





うん・・・


まあ俺はあいつのせいで、毎日けなされまくっていたのだから気が楽になるので残念ではなく、むしろ嬉しいくらいなのだが・・・



はぁ、はぁ・・・


帰ってる途中、後ろから走ってきた女子が俺たちの前で立ち止まった。



あ、あの・・・





はい


誰だ、この人?



あ、確かC組の栗山茉奈さん?





はい、そうです。





おまえ知ってんの?





もちろんよ!
バスケ部で一年からレギュラー、定期テストではいつも上位、運動も勉強もできてさらに性格も良くておまけに美人、完璧すぎて学校の有名人よ!
知らないあんたの方がおかしいわ!





完璧だなんて、そんな・・・





そんな人が俺の学校にいたのか・・・





それで、何の用かしら?





実は羽柴恵さんの話で相談があって・・・





羽柴のことで?


何故ほとんど関わったことのない俺たちに相談を?
そもそもの話、こんなすごい人が羽柴と何の関係があろうことか。



そういうことなら立ち話もなんだし、ファミレスにも行こっか?


彩佳はとてもすんなりと返答をした。



じゃあ俺はここらへんで・・・





なに逃げようとしてるの~





いや逃げようとしたのではなくだな、こういう時は女子だけで話をした方がいいと思ってだな・・・





ん~?





俺はそちらの方がよいと思いまして・・・





それで~?





行けばいいんだろ、行けば!





わかればよし!


言葉で負けた俺は強制的に彩佳の指示に従わされた。



こちら、コーヒーでございます。





はい、私です。


ファミレスでコーヒー!
なんか大人っぽいというか、ホントにスポーツ系の女子っぽくないよな~
どちらかというと文化系女子みたいな?



あつっ!!!
っていうか、にがっ!!!


そりゃあ、きたばかりのコーヒーは熱いでしょうな~



大丈夫?





大丈夫です!


そう言って彼女は机の上に置いてあった砂糖をドバドバ入れた・・・



えっ!?
砂糖そんなに入れるの?





はい、私甘党なんです!


そう言って彼女は砂糖をドバドバと入れ続けた。



へ、へ~


まあそれはそうとして、本題をそろそろ話したいのだが・・・



その、羽柴のことで相談ってなんですか?





はい、実は羽柴さんとは芽節中学校で一緒の学校に通っていました。





芽節中学校・・・





どうかした?





なんでもねぇよ・・・


その後、彼女は自分と羽柴の過去を話してくれた。
親友であったこと、ライバルであったこと、それと栗山さんが羽柴のことをいじめていたこと、羽柴が自殺未遂をしたこと・・・
俺らはあっけに取られた・・・



私は5歳の頃からバスケをやっていました。
彼女は中学からバスケを始めました。
なのに私は彼女に負けていた・・・
悔しくて毎日朝早くきて練習して・・・
でも彼女も陰で努力していました。
私がそのことを知った時、才能がない私が努力しても、才能がある彼女が努力したら追いつけないって思いました。





私は部活も勉強も恋愛もいつも彼女に劣っていた。
いつも近くにいたからこそ、その差をまじかに感じていたのかもしれません。





でも彼女がいなくなってからわかったんです。
私は彼女がいたからこそ頑張れた、彼女を目標にしていたから、私として生きることができていたんだって。


栗山さんが言っているのが本当であれば、彼女は今も昔の羽柴を目標にして生きている。
今の彼女は昔の羽柴をリスペクトして出来上がった人なのかもしれない・・・



彼女がいない時の私はまるで屍のように生きていました。
受験勉強にも身が入らなくて私は親の薦めでこの学校に入学しました。
二年生の新入生歓迎会で私は彼女がこの学校に通っていると知って驚きました。
そして怖かった。
彼女は私を絶対に恨んでいる、私に復讐してくるのではないかって考えました。





・・・け・・な・・・





!?





ふざっけんなじゃねーよ!!





・・・


彩佳はいきなり怒鳴っては栗山さんの胸ぐらを掴んだ!



さっきから話をしてれば自分のことばっかり!
そんなことで親友、語るんじゃねーよ!
あんたは反省なんてしていない!
あんたの過去かなんだかしらないけど、他にできることがあんだろ!
伝えたいことがあるのならはっきり言えよ!





・・・


こんな彩佳を俺は一度見たことある。
ただ、それ以来のことであったから俺も少し驚いた。



私は・・・


目の前で彩佳が倒れた・・・



おいっ、彩佳!
しっかりしろ!
栗山さん!
救急車!





・・・っはい!





はあ、はあ・・・


すごい熱だ・・・
俺と栗山さんは今、彩佳の診断が終わるのを待っている・・・



・・・





・・・


俺らが気まずい空気を発しているなか、病院の入り口から女性が走って来た。



彩佳のお母さん!





拓実君、彩佳は!?





今、診断室にいます。





そう・・・





すいません、私のせいなんです・・・





え・・・っと・・・
どちら様ですか?





彼女は同じ高校の栗山茉奈さんです。
俺たち三人でファミレスに行ってて・・・





そっかそっか、二人共そんなに気にしないで!


すると、彩佳が入っている診断室から医師だと思わわれる男性が出てきた。



中島先生!





お母さん、診断室に入ってもらえますか?





・・・?


なにか二人の発言に違和感を覚えた。



はい・・・





二人共、もう遅いし先に帰っててもらえる?





・・・はい


次の日、俺と栗山さんは彩佳が入院している病院に行った。



オッス!





お、おう・・・
大丈夫か?





うんうん、大丈夫!
なんか喘息の発作が起きたみたい、明日には退院できるらしいし!





すいません、私が自分勝手な発言をしたせいで・・・





いいの、いいの!
私も言い過ぎたし・・・
自業自得みたいな?





で~も!
伝えたいことがあるのなら本人の前じゃないと!
あなたがやりたいことは何?
今したいことって何なの?





私は・・・
私は羽柴さんに・・・めぐみに謝りたい・・・
あの後、謝れなかったこと、めぐみに顔合わせられなかったことを後悔してる・・・
だから、謝りたい・・・





じゃあ、善は急げって言うし、今からめぐみの家に行こう!





今から!?





そうそう!
今なら我が奴隷の拓実あげちゃうから~





奴隷じゃねぇよ!





じゃあ、下僕だ!





同じじゃねぇか!





あんたがサポートしてあげなさいよ!!





へいへい・・・


俺は中学生の頃を思い出す・・・
俺が一番つらかったあの時、手を差し伸べたのは彩佳だった・・・
