自宅のキッチンにて…
自宅のキッチンにて…



やっちゃった…





ちょっと!!何やってるのよ!!


床に撒き散ってしまった食材を片付ける私とお姉。



…せっかくスーパーの特売で買ってきたクッキーの材料だったのに…





これじゃ、普通の日に買いに行ったのと、変わらなくなっちゃうよ…





工業簿記的に言えば「材料消費価格差異」の発生ね…





それ、この前の授業でやった奴だ!





予定していた数量よりも材料を多く使っちゃった時に使う勘定科目だよね!





そうね。





今日の例で言えば、美琴が材料を床に落とさなければ、300円で買ってきた材料を1袋使えばクッキーはできていた訳だけど、この後余計に材料を1袋買ってこないといけなくなったわよね。





例えば、その材料を400円で買ってきたとすると、クッキーを作るのに材料費として700円出ていったことになる。





「予定」では特売で買ってきた時の300円だけで済むはずったのが、結局700円かかってしまったから、400円の「材料消費価格差異」が発生した、という訳だね!





実際の工場では、材料の価格自体に「予定」を設ける場合もあるから、消費量だけでなく価格で差異が発生した場合でも「材料消費価格差異」を使うわよ!





特売を見越して300円で予定していたけど、実際に買い物に出掛けたら特売は終了していて、400円のものしか買えなかった。





こんな場合には、100円の材料消費価格差異が発生する、という訳だね!





そういうこと。
今まで出てきた例は、全部「余計にかかってしまった」場合だから、これを「不利差異」と呼ぶけど…





例えば特売の300円よりも更に安く値引きしていて200円で買えたとか、1袋使い切る予定が半分で済んだ、みたいな場合には、余計に材料費が使われなかったことになるから、逆の「有利差異」が発生するわね。





もし、ここがクッキー屋さんだった場合、私たちにも「給料」が支払われるよね。





で、私がさっきみたいに失敗とかしちゃった場合、いつも以上に長く働かないといけなくなるだろうから、工場は給料を多く支払うことになるよね…





そうね。
工場は、製造に携わっている工員の給料も緻密に計算して製品の売上原価を算出しようとするから、通常は「予定」で労務費も仕掛品や製造間接費に配賦しているはず。





で、今回みたいな失敗を従業員がして、予定していた作業時間よりも多く作業をしなきゃいけなくなった場合、労務費の予定消費額が実際のそれと異なる結果になるわ。





その場合は「賃率差異」を使えばいいんだよね!





その通り。





さっきの美琴の失敗は「不利差異」が発生する悪い例ね。
実際の工場では、従業員がそういった失敗をしない工夫がされていることがほとんどだわ。





でも逆に、従業員が頑張って、予定作業時間よりも短い時間で製品を仕上げた場合は、予定よりも安く賃金を支払うことになるから「有利差異」が発生するわけだね!





そういうことね。





「材料消費価格差異」「賃率差異」以外にも「製造間接費配賦差異」というのもあって、製造間接費も実際にかかった費用が集約される前に、年間予定作業時間などを使って予定配賦され、月末に実際との差額を比較して差異を計上するわ。





「有利差異」と「不利差異」を見分ける分かりやすい方法はないかな?





「○○差異」が左に来る場合って、材料なり労務費なりを余計に消費しちゃって、右側に書いたパターンの時でしょ?





余計に材料や労務費を使った訳だから、この場合は「不利差異」になるわ。





なるほど!
逆に、「○○差異」が右に来れば、予定で消費しておいた材料や労務費を左に書いて戻している訳だから、工場から見れば「儲かった」ということになって「有利差異」なわけだね!





そういうこと!





って…すっかり工業簿記の話をしちゃったけど、早く材料を買い足してこないと…





煉先輩に、クッキー渡せなくなっちゃうわよ!





それは困る!!
だって、先輩に約束しちゃったもん…





もう「材料消費価格差異」を気にしてなんかいられないわ!
お姉、すぐに買ってくるから、片付けよろしく!!!





…あの子が工場長なんてやったら、きっとその工場はすぐにつぶれてしまうわね…


…
chapter8 に続く
