かくかくしかじか
ユキムラ、ノーラ、オマケ
の
3人は隣国を目指して川を渡っていた。
彼らが魔王の元を目指すわけでもなく
こうして隣国を目指す理由
それは他ならぬ
彼らに力がない故に目指していた。
実のところ
彼らが魔王討伐隊に選ばれたのは
絶滅危惧種である東の獣人だからだ。
そのため人数にも心元ない。
本来なら大人が出るとこだろうが
子供に知識を与える者がいなくなる
と
言うほどにまで危機的状態ゆえに
こうして、半人前の彼らが出された。
かくかくしかじか
ユキムラ、ノーラ、オマケ
の
3人は隣国を目指して川を渡っていた。
彼らが魔王の元を目指すわけでもなく
こうして隣国を目指す理由
それは他ならぬ
彼らに力がない故に目指していた。
実のところ
彼らが魔王討伐隊に選ばれたのは
絶滅危惧種である東の獣人だからだ。
そのため人数にも心元ない。
本来なら大人が出るとこだろうが
子供に知識を与える者がいなくなる
と
言うほどにまで危機的状態ゆえに
こうして、半人前の彼らが出された。



しっかしまぁ…国王もケチ臭い。3人…2人と1匹だけってさぁ…。





ねー。





もはや、国として成り立っているのかすら不明だな…。





そうそう、国ってさ?それだけの民がいて成り立つんだろう?





まぁ、仕方ないんじゃないのー?元々はおっきな国だったんでしょ?





そうそう、元々は。


今から数十年前のこと。
獣人は魔力が高く、獣へも人へも自由自在に化けれることから、使い勝手のいい存在として扱われてきた。
しかし、魔力が高くとも、ストレスを感じやすい種族だ。
多くのストレスを与えてしまうと、それだけで命を落とす場合も少なくはなかった。
いち早くこの事態に対処していた西の獣人の国は、この時期だけ他国との交流を一切断ったので、被害を負ったのは東だけだった。



まったく…いやね。動物だかなんだか知らないけれど、愛玩動物ーなんて奴隷にしてくる輩は。





まぁ、今は人種差別なんてないじゃん。





そうだけど…今、東の獣人が絶滅寸前なんて言われてんの…その奴隷騒動があった所為でしょ?





んーそうなのかなー。





まぁ、もういいよ…ついたから。隣国の西の獣人達の国だ。


橋を渡り切ったその先は、とある国では拝むことすら出来ない、まるで異世界かと思わせる建物が建っていた。
足場には小石が散りばめてあり、とある国よりもずっと穏やかな風貌だ。



ふーん…ここが?そうなの?





ノーラは国から出ること自体…初めてだっけ?





そう。ユキムラと違って、やんちゃはしないタイプだったから。





やんちゃってなぁ…。確かに、大人の目を盗んで散々散歩はしたけどさぁ…。


ユキムラは幼いころより、外への興味が強かった。
初めて大人の目を盗んで走った先がこの、天照大神の国…西の獣人たちが住まう国だった。



おや…珍しい。とある国より、お客人ですか…?


ノーラがあっちもこっちもと、物珍しそうに四方八方と首を動かす中、建物からひょっこりと顔を出す青年がいた。



あーミツナリ~やっほー。





……なに、知り合い?すごい変わった格好。





あはは、国によって違うんだよ。こいつらからしたら、俺たちの方が物珍しいと思うよ?





さて、ミツナリ。俺は何しに来たでしょーか?


ミツナリと呼ばれた青年は驚いたかのように目を丸くした。



これまた唐突ですね。





そうですね…どうやら伴侶さんもお連れみたいなので…。





新婚旅行に隣国へ…ってとこですか?


そして、何を思ったのかこんなことを言い出すのだ。



あー…いや、そもそも伴侶じゃないんだけど…?


ミツナリとは、出会いはじめもそうだった。
彼はどこかしら抜けており、そして悪気は一切なく、ただただ少し感性がずれている存在だった。
予想もしなかった一言に、面を食らってあんぐりとする。



そ、そうでしたか。





伴侶ねぇ…?何をどう見たのかしら?





まぁ、いいじゃん。





ふーん…?


ノーラは不満気味につぶやく。
そんなに俺の伴侶は嫌ですかそーですか。結構顔には自信あるんだけどなぁ…なんて心の中で毒づきもしたが、本来の目的を思い出してミツナリに声をかける。



あのさ、もうお前んとこは…魔王討伐隊とやらは出てんの?





あぁ…なるほど。





それでしたら、現在…会議が行われていますよ?3名ほどは即決だったのですが…残りの2名を決めあぐねているご様子です。


思わぬ返答が帰って来て、驚く。ここの国は、魔王討伐隊が出発するどころかメンバーさえも決まっていないというのだ。



え、ちょっと何ちんたらしてるのよ。





んー…忙しいの?


ユキムラ達が魔王討伐隊に選ばれたのは1週間ほど前のことだった。国王が、各国の王が集まる会議から帰還してから、たったの3日ほどでメンバーが決まった。
残りの4日は、旅立つ準備や別れを惜しんでといったところか。ユキムラ達は、自分たちの出立が遅いとすら感じていた。



遅い…でしょうか?他国は、闘技を開いたり…魔物を多く狩り競わせたり…など、どうやらもっとお時間がかかるようですが。





もうすぐ復活なのに!?





…………呑気なものね。





あー…でも…それなら、他の隊に混ぜてもらえそう?





混ぜてもらう…?


ユキムラの一言に、ミツナリは不可思議そうに首を傾げる。どうやら、ユキムラ達が魔王討伐隊ということは視野に入れていないらしい。



あー…実は…俺達、魔王討伐隊メンバーにされたんだよ。そっちのふよふよした変な生き物も含めて。


ふよふよと、と例えた生物の方へ顎を向けながらものを言う。かく言うふよふよした存在は実に不満げである。



………ポチ丸です。本名は忘れました。





可愛い!なにこれ!?新時代のぬいぐるみかなんかですか!?





あ、すみません。





………えっと…。





ユキムラ、君が魔王討伐隊メンバー…?


まるで想定もしなかった、というような目だ。
無理もない。この東と西の獣人の国の間は、比較的に安全で魔物も少ないが、ユキムラはここへ遊びに来る際に戦えたことがないのだ。
ユキムラが魔物に追われては、ミツナリが助け…といった感じなのである。



うん。ノーラも含めて…魔物すら倒したことがないようなメンバーが…選ばれたわけ。





………そうですか…お気の毒に。


ミツナリは、同情の色が深い目で言葉を口にする。



いやいやいや、だからさ…このままじゃ魔王の元まで行けなさそうだし…そっちの隊に混ぜてもらえないかなー?って。





そういう意味だったのですか。





しかし僕の一存で決めるワケには…。





もし、同行させてくれるなら…そこのふよふよあげてもいいのよ?どうせ目的は同じなんだし…ね?いいでしょ。





!?





わかりました!いいですよ!


ミツナリは余程嬉しいのか、尻尾をパタつかせてふよふよ丸へ抱き付く。先ほどの、僕の一存で…とはどこへ行ったのやら見る影はない。



えーと…じゃあ…残りのメンバーが決まるまでは、ここに居候してもいいのかな?





いえいえ、もちろん野宿ですよ!





えぇ!?





ちょ…野宿!?いやよ!





仕方ないですねぇ…。では屋根の上なら特別に許しましょう。


本来は、他国のお客を泊めるのは長老様の許可が必要で、その許可をお頼みするのはすごく大変なのですが…などとぼやいているミツナリを背に、ユキムラは満足げに微笑んだ。



よし、これで…あとは…適当についてって適当に魔王を倒してもらって、適当に帰って来て英雄ニートになるだけだ。


