- 詠唱妨害 -



グッ……。


- 詠唱妨害 -
魔法の詠唱中に一定以上の攻撃を受ける、または単に攻撃を受けると、魔法の発動が妨害されてしまう。
詠唱を伴わない通常のスキルについても同様の場合があるが、こちらは余程の事が無ければ妨害されない。
大きく吹き飛ばされるようなスキルを使用された場合は、基本的に全ての行動が妨害される。



クソッ、今度こそ!





まあ待て。


レグルスは、影の横まで戻ってきていた。しかし、影は完全にジークの目の前に陣取っているため、割って入ることはできない。



次の攻撃なんだが、ヤクルトの目の前を狙うことはできるか?


ヤクルトはレグルスの正面、その延長線上に立っている。



ああ、できるが……。





じゃあ、その地点に攻撃を頼む。


敵の行動が始まり、影がジークを狙って武器を振り上げる。



俺の方が早い。


レグルスの一撃を受け、影が大きく吹き飛ばされる。
吹き飛んだ先は、ヤクルトの目の前だ。
待ってましたとばかりに、ヤクルトの連撃が影に叩き込まれる。



トドメです!





そういうことか……。
よし、任せてくれ。


ジークが火球を放つ。
影には側面への着弾となったが、トドメには十分過ぎる一撃だった。影はそのまま崩れ落ち、消滅した。



やったな。





ヘイトがジークさんに移った時はどうなることかと思いましたが、なんとか全員無事で終われましたね。





あれは焦ったな……。
私の耐久力では、2発目を耐えきるのは不可能だっただろうからな。





とにかく、これでクエストクリアだ。
報告を済ませるとしよう。





ありがとうございます!
おかげで助かりました。





あ、お母さん!


大木の扉が開き、中から女性が現れた。
女性は3人の前までやってくると、頭を下げた。



助けていただき、ありがとうございます。
見事な戦いぶりでした。





お礼というわけでは無いのですが、このペンダントを貴方に。
受け取ってください。


女性が差し出したペンダントを、レグルスが受け取る。



あれ、これ俺が貰っちゃっていいのか?





安心してください。
僕の画面では、僕が受け取っています。





なるほど。
それならいいか。


メインクエストを無事終えた3人は、街へ帰還した。



2人ともありがとう。
おかげでクエストを無事終えることができた。





いやこちらこそ。
ジークさんが居なきゃクリアできなかったよ。





また、君達と共に戦いたいものだ。
何かあれば、いつでも呼んでくれ。


ジークはそう言い残し、酒場から出て行った。



……本人の前では言い出しにくかったんだが、口調が妙じゃなかったか?
作ってる感じがするというか。





感じというか、まさしく作っているんだと思いますよ。ロールプレイと呼ばれる遊び方ですね。


- ロールプレイ -
文字通り役割を演じること。ゲーム内のキャラクターになったつもりで、振る舞いや発言をする遊び方を指す。
アニメや漫画のキャラクターになりきりから、オリジナルのキャラ付けまで幅広く存在する。



へぇ、そんな遊び方があるんだな。
俺達もしてみるか?





なんとなくですが、僕達の振る舞いはキャラクターとそれほど乖離していないように見えますよ。





……言われてみればその通りだ。
知らないうちにロールプレイしてるのかもな。





そうかもしれないですね。





ところで話は変わるが、さっきのペンダントって人数分あるんだよな。





でしょうね。僕も持っていますし、ジークさんも持っていると思いますよ。





仕方ないのかもしれないが、違和感あるよな。
普通のRPGなら別にいいんだが。





確かに、特定の1人を対象としたストーリーは、ネットゲームとしては違和感があるかもしれないですね。





レグルスさんが作るゲームでは、複数人いることを前提にしたストーリーにしてみてはどうですか?





別に俺が話を書く訳じゃないだが。
まぁ、機会があれば相談ぐらいはしてみるよ。





ともあれ、メインクエストはこれで終了です。僕はこれで落ちますね。





ああ、俺もそうするよ。
またな。


- 落ちる -
ログアウト、つまり、ゲームから切断することを指す。これが寝落ちになれば、ゲームを付けたまま寝てしまうことを指す。
大抵どこにでも、寝落ちをよくしてしまう人が1人は居る。ちゃんと布団で寝ろ、と思われるかもしれないが、そういう人は布団でプレイしている。
