- メインクエストとサブクエスト -



あ、居た居た。
こんばんはレグルスさん。





よう。
丁度上等なナスが収穫できたところだ。
食っていくか?





だから、どの材料も変わりませんって。
レグルスさん、すっかり生産にハマったみたいですね。





おう。中々楽しいぞ。
生産レベルも結構上がってきた。





それは何よりです。





生産中になんなんですが……よければ、この後メインクエスト進めませんか?





メインクエスト?





はい。
ゲームの本ストーリーですね。


- メインクエストとサブクエスト -
多くの場合、ゲームのストーリーが進行するイベントがメインクエスト、それ以外はサブクエストという扱いになる。
プレイ期間が長期になり易いネットゲームにおいて、メインでこなすことになるのは、どちらかといえばサブクエストの方になる。



なるほど。
このゲームのストーリーなんて気にしたこともなかったな。





ネトゲのシナリオって、軽く扱われがちですからね。結構、飛ばす人も多いらしくて。
僕もあまり、人のこと言えませんが。





それじゃ、やってみるか。
準備するから待っててくれ。





ありがとうございます。
準備が終わり次第行きましょう。





ところで、そのメインクエストっていうのはどこで受けたらいいんだ?





6号さんが教えてくれたんですけど、街の入口付近に居る少年がフラグになっているみたいです。


- フラグ -
条件・状態のこと。今回の場合、少年との会話がクエスト開始の条件、あるいは、少年との会話によりクエスト中の状態になる。というような意味合いとなる。



ああっ! そこの旅人さん!
お願いです! 助けてください!





……そういえば、そんな設定だったな。





シナリオらしいシナリオなんてオープニングぐらいしか見てませんから。完全に忘れてましたね。





僕の家が、モンスターに襲われて……まだお母さんが中に居るんです! 助けてください!





なるほど、この子のお母さんを救出するのが最初の話か。
選択肢は勿論 はい で。





ありがとうございます!





僕の家はこの森の先にあります。
ついてきてください!


少年は会話が終了するや否や、全速力で森の中へ駆けていった。



よし。追うぞ。


少年を追いかけて進むと、大木が見えてきた。
大木の根には明かりが掛けられ、扉が取り付けられている。あれが少年の家なのだろう。



見てください。
家の周りに、妙な影が集まっています。


大木をぐるりと囲むように、黒い影が集まっている。
一部がドアに群がり、激しく叩いている。



……結構、多いな。これ勝てるのか?





やってみないことにはなんとも。





とりあえずやってみるか。


2人が影に対して戦闘状態に入る。
それに反応し、影達が2人に向かってきた。
個々の戦力は大したこと無く、正面からでも1撃で倒すことができる。
しかし数が数であり、あっという間に囲まれてしまった。四方を塞がれているため、攻撃を避けながら戦うこともできない。



厳しいぞこりゃ。
戦士だから受けるダメージは大したことないが、その分殲滅力が無いからな。このままじゃジリ貧だ。





背後からのダメージは無視出来ませんね、背中合わせで戦いましょう。





漫画みたいだな。この戦い方。





言ってる場合じゃないですよ。
これじゃなぶり殺しです。





まぁ、背後以外のダメージは大したことがない。
お互いが背後をしっかりカバーして戦えば、死ぬ前には倒しきれるさ。多分な。





無理でしたね。





あの黒い小人共、数多すぎだ。
久々に全滅したな。





やっぱり、戦士のみだと火力に難がありますね。どうしてもジリ貧になってしまいます。


- 火力 -
攻撃力、その度合を意味する言葉。または、攻撃力の高い職業そのものを指す場合もある。



じゃあ、他職のやつ誘ってみるか。





それがいいですね。





他職といえば、魔法使いと聖職者か。
火力と回復だな。
どっちを入れるべきだ?





どちらでも問題ないと思いますよ。
魔法使いが入れば火力が格段に上がりますから、僕達が倒される前に殲滅できるでしょう。
聖職者が居れば、時間は掛かりますが全滅はありません。





それじゃ、酒場で募集掛けてみるか。





待ってくれ。


2人の側に居たプレイヤーが、唐突に話しかけてきた。
同レベル帯の魔法使い。名前はジークというらしい。



話は聞かせてもらった。
君達も、あの影にやられたのだな?





はい。
君達も……ということは、ジークさんもメインクエストの途中ですか?





ああ……。
単身乗り込んだはいいが、あの数だろう。
アッサリ囲まれて、このザマさ。





君達、魔法使いを探しているんだろ?
私も連れて行ってくれないか?





僕は構いません。
レグルスさんもいいですか?





勿論だ。手間が省けたな。





よろしく頼む。
それでは、リベンジといこう。


