2人は金稼ぎのため、依頼を繰り返している最中だった。
順調に貯まっていくのはいいが、同じ敵とばかり戦っていると、流石に辟易としてきたらしい。



飽きてきたな。





そうですか?
僕はそうでもないですね。


2人は金稼ぎのため、依頼を繰り返している最中だった。
順調に貯まっていくのはいいが、同じ敵とばかり戦っていると、流石に辟易としてきたらしい。



そうか。それならいいんだが。





適当に話しながらやってれば、あっという間ですよ。





この状態じゃゲームよりも雑談の方が主になってるな。





それもネットゲームの楽しみ方の1つですよ。





ふーん。そんなもんか。





そういえば、ヤクルトはどうしてネットゲームをやってるんだ?





理由?





手軽さと、やっぱり色んな人と遊べるのは大きいですね。





やっぱりそこに行き着くか。





このゲームが無ければ、レグルスさんと会うことは、恐らく無かったでしょうしね。





わかんねーぞ。
案外、隣人同士だったりするかもしれないだろ。





ハハ、そうだったら面白いですね。
大体どの辺ですか? 僕は東北の方ですが。





全然違うな。俺は四国だ。





まぁ、そんなもんですよ。
逆に言えば、それだけ離れているのに一緒に遊べるというのも、ネットゲームならではってところですね。





確かにな。





そういうレグルスさんこそ、どうしてネットゲームを始めようと思ったんですか?





俺か。俺は……仕事だなぁ。





ええ? ゲームをする仕事なんですか?





あ、悪い。作る方だ。
仕事でネットゲームを作るかも、って話になってな。その下見みたいなもんだ。





なんだ。そういうことですか。
IT系の仕事をされてるんですね。





ああ。
ゲームの開発なんて専門じゃないんだが、なんでこんなことになっちまったんだか。





はああ。大変ですね。





ところで、仕事のための下見中なんですよね?
用が済んだらもう辞めちゃうんですか?





んー、そうだな……。


仕事のために始めたことは事実だが、単に興味を持って始めたのもまた事実。
しばらくプレイしてみた感想は悪くなく、新しく知り合った友人と早々に別れるのも、なんだか惜しい気がした。



いや、どうやらハマったらしい。
このまま続けるよ。





そうですか。
安心しました。





とはいえ、開発が本格化してきたら、しばらくはゲームもできないかもなぁ。
さっきも言ったがうちは専門じゃないから、ノウハウも何もない。1から手探りじゃ相当骨が折れるだろうな。





……体調には気をつけてくださいね。





おう。ありがとよ。





結構お金貯まってきましたね。





そうだな。





このまま続けてもいいんですが……、ちょっとマンネリしてきたみたいなんで、少し別の依頼をやってみますか。





お、いいな。
どんなやつだ?





納品系の依頼ですね。
指定されたアイテムを持ってくればクリアです。
今回の納品物は料理ですから、料理を作って、それを持ってくればOKです。





料理を作る……?





メニューに項目があるんですけど、触ったことありませんか?
生産という項目です。


- 生産系スキル -
料理、装備品の製造、アイテムの生成等に使用するスキルを生産系のスキルと呼ぶ。
多くの場合、プレイヤーが製造する装備品は店で販売しているものより高性能である。
また、生産系スキルを極めるには多くの手間と時間がかかるため、生産系スキルの高いプレイヤーは重宝される。
ゲームの本筋そっちのけで、生産を極めようとするプレイヤーも極少数だが存在する。



なるほどなぁ。
料理もできたりすんのか。





わりとよくある要素ですから、開発の参考にどうです?





俺の仕事のことなんて気にするなよ。
しかし料理は面白そうだな。





ところで、料理ってどこでやるんだ?
酒場の料理台でも借りるのか?





いえ、生産系のスキルは材料さえ揃えばどこでも使えます。
専用の場所でしか生産系スキルが使えないゲームもありますけどね。





なるほど、それじゃ材料さえ揃えればこの任務はクリアだな。





で、どうやったら材料は手に入るんだ?
店は一通り見たが、料理に使えそうな物が売っている店なんて無かったと思うが。





収穫します。





は?





収穫するんですよ。
材料を収穫してきて、それを元に料理を作るんです。





そこからかよ。
良い料理を作るには、材料からこだわりを、ってことか?





ゲームなので、どれも一緒ですけどね。





身も蓋もねぇな。





ゲームなので、どの料理もボタン1つで出来てしまうんですよ。
実際に作る段階よりも、集める段階の方がゲーム性を持たせやすいわけですね。





なるほど。言われてみりゃそうだ。
材料をモンスターに持たせるとかすれば、このゲームの主要素である戦闘にも絡めやすいしな。





そういうことですね。





本格的な料理モードを作ってもいいのかもしれないですけど、ゲーム変わっちゃいますからね。





確かにな。
余裕があれならやってもいいのかもしれんが……。





それじゃあ、収穫に向かうか。
どこで収穫できるんだ?





街の外れにある、生産エリアですね。





それと、料理以外の生産系スキル……つまり、装備品の製造やアイテムの生成も要領は同じです。
料理の材料が集められる場所で、装備品やアイテムの材料も集められるので、そちらの準備もしておきましょうか。


街の外れに用意された生産エリア。
低レベルの生産系スキルで必要な材料は、ほぼ全てここで集めることが出来る。
材料を収穫するための道具は各人で用意する必要があるため、2人は収穫に使う道具を僅かずつ購入した。



それじゃあ、収穫していきましょう。
料理系の材料は北の農場エリア、装備品に使う材料は東西の森林・鉱山エリアですね。
どこから行きます?





それじゃ、まずは装備品用の材料から集めるか。





いきなり寄り道からなんですね。





まあな。
元々の目的を達成してから寄り道するより、寄り道してから元々の目的に向かうほうが、一見無駄がない。





……わかりそうでわからない理論ですね。
どうせ全部寄る予定ですから、構いませんが。


森林エリアに、木を伐採する音がこだまする。
木が倒れる音にまぎれて、何かが壊れるような音がした。



もう壊れちまったよこの斧……。





僕の方もです。
一応予備も持ってきたのに、そちらもあっという間でしたね。





所詮安物か。





おや。


森林エリアの奥から、別のプレイヤーが姿を現した。
レグルスは、そのプレイヤーに見覚えがある。



また会ったッスね。


ゲーム開始直後、街の入口で出会ったプレイヤーだった。
プレイヤーの情報を確認してみると、名前は"6号"となっている。上級者らしく、レベルはかなり高い。



あ、6号さん。
こんにちは。





確か……街の入口に居たな。
というか、ヤクルトも会ったことがあるのか?





はい。僕も街の入口で。
ゲームを始めた時、色々教えてもらいました。





コイツもしかして、ずっとあそこに居るのか?





2人とも生産?





はい。
生産入門クエストの途中です。





なるほど。生産入門クエストッスか。
懐かしいッス。僕も最初は一度……。





あれ?
でもあれって料理じゃ?





料理のついでに、他の生産系スキルも試してみることにしてな。
次は鉱山に行く予定だ。





それはいいッスね。
僕も付いて行っていいッスか?





俺は別に構わねーよ。
ヤクルトは?





勿論構いませんよ。
それじゃあ、早速向かいましょう。


