


この掃除機はもう使えませんね。廃棄してしまいましょう。





…………





何してるのエイミさん?





恵さん。掃除機が壊れてしまいました。





ああ……





今まで、役に立ってくれてありがとね。ご苦労様、しっかり休んで……





ねえエイミさん。道具は、役目を終えたらどこに行くのかな。……その魂は救われるのかな。





廃棄物の向かう先はゴミ処理場ですよ。





聞きたい答えじゃありませんね。





だって、道具に魂はありませんから。役目を終えてしまえばただのもぬけの殻です。





そんな……道具だからってそんなの嫌だよ……それじゃ、エイミさんも……?





エイミも、です。





わかってるけど……やっぱりそんなの寂しいよ。今こうやって話をしたこと、触れ合ったこと、全部消えちゃうの?





消えはしません――





魂は残らない。そんなものは初めから無いから。





でもお互いの過ごした時は。一つはエイミたちのネットワークデータベースに。
もう一つは、恵さんの中に記憶として。必ず残るから。





記憶なんて……忘れちゃうよ。すぐに色あせてぼんやりしちゃうんだ。





だから、もう一方をエイミが受け持つんです。必要とあらば10年でも100年でも完璧に記録してみせましょう。





うん……電子記録だもんね。そこは期待してる。 あたしが何か忘れちゃったら、思い出させて。





もしもだよ、エイミさんのことさえ忘れちゃってたら……ひっぱたいてでも、思い出させてね。





ひっぱたきますとも。承知しましたよ。今から拳を鍛えるのが楽しみで仕方ありません。





言葉のあや!


