現在地、お化け屋敷の場として使用されている館の三階。
一時撤収を図ったお化け達との再会を求め、ようやくその場所に辿り着いた王兄姫達を待っていたものは……。
――過激度と残虐度が跳ね上がった恐ろしい阿鼻叫喚の軍勢であった。
そこら中、発光効果込みの鮮血が飛び交い、お化けの種類もまた、一目見ただけで卒倒しそうな本気の類となっていたのだ。



……。





お嬢ちゃ~ん……、お前も、私の中でグチャドロの肉片に変えてやろうかぁぁぁああああっ!!





ちょ、ちょっと、これは……っ。





流石のユキも、今度こそ恐怖で固まったか……。





ふへへへへぇええぅ。お嬢ちゃ~ん、頭からボリボリ食べてやろうかねぇ~……。





……うぅっ。


現在地、お化け屋敷の場として使用されている館の三階。
一時撤収を図ったお化け達との再会を求め、ようやくその場所に辿り着いた王兄姫達を待っていたものは……。
――過激度と残虐度が跳ね上がった恐ろしい阿鼻叫喚の軍勢であった。
そこら中、発光効果込みの鮮血が飛び交い、お化けの種類もまた、一目見ただけで卒倒しそうな本気の類となっていたのだ。



私も、ちょっとこういうのは生理的に……。





おお、おおっ、可愛い子供じゃ~っ。柔らかそうな肉、肉、肉、じゅるりぃぃぃっ。





い、やぁ……っ。


小刻みに小さな身体を震わせ、セレスフィーナの足元に縋りつく幼子。
その様子を目にしたお化け? 要員達が、勝利の確信と共に追い打ちをかけにかかる。



ケケケケケケケケケケケケッ!!





……。





セレスおねえちゃん……っ。





大丈夫ですか? ユキ姫様……。外に出ましょうか?





!!


まだ幼い王兄姫は泣いていない!!
その愛らしく、くりんとした丸く大きな瞳から大粒の涙が零れて泣きじゃくるまで、俺達の戦いは終わらない!!
そう、お化け? 要員達は思っているのだろう。
入口まで引き返そうと動き始めたセレスフィーナ達の前後を大量のお化けスタッフで壁を作り、逃がすものかと詰め寄ってくる。
その目はなんだか……、今すぐに騎士団へと連行されるべき犯罪者のようなギラリとした淀みのあるカオスな気配を抱いているように感じられるのは気のせいか。ともかく、散々プライドを踏み躙られたお化け屋敷の面々は、心の底から本気すぎであった。



う……っ。





ユキ……?


じわりと、可愛らしい姫君の瞳から恐怖? の涙が零れ出た、その瞬間。



ユキ姫様!?





ぇえええええ!?





うぅっ……!!


まさかのまさかだった。
確かに涙を零すところまでは望み通り。
しかし、そこでまさか盛大に……。



ゲ○るとは思わなかった……。(滝汗)





おぉおおいっ、お嬢ちゃん、ものすっごく具合悪そうだぞ~!! 吐くのも止まんねぇし、ちょっ、これはっ。





あ~あぁ、だからこれはやめとけって言ったんだよぉ~っ。子供に残虐スプラッタ系は駄目だって。おい、誰か救護班を!!





医者ならばここにいる。……それよりも。


けほけほと咳き込みながら苦しむ王兄姫を姉のセレスフィーナに託し、ルイヴェルはそっと前に出た。
感情の気配が一切見えない顔を、仄かな光が薄っすらと照らしだし……。



ウチのチビを楽しませてくれた礼だ……。受け取れ。





え?





は、はいっ!?





ちょっ!! い、今のなにぃいい!?





お、お化け屋敷が!!





見て見て~!! なんか沢山吹っ飛んでくんだけど~!!





あれ……、お化け屋敷のスタッフさん達ですよ、ね。とりあえず救護班呼んでこなきゃ。


突然起こった、お化け屋敷の爆発騒動。
幸いな事に、誰一人として死人や重傷者はいなかったものの……。
被害者の者達は皆口を揃えてこう言ったらしい。
世界が終わる瞬間を味わった、と。



うぅ~、幸希、お手洗いに行く~!!





ふぅ……。やはり、ああいう子供騙しの場所はつまらんな。セレス姉さん、ユキに付き合ってやってくれ。





はぁ……、王宮に戻り次第、レイフィード陛下にお化け屋敷の被害に対する報告をしないとっ。あぁ、それよりも、お父様にこの件を知られたらっ。


騒動の張本人である双子の弟は飄々とした風情で、幼い王兄姫の背中を撫でてやっている。
いつもこうだ……。いつもいつも、双子の姉である自分が、後始末に奔走する羽目に。
セレスフィーナはモクモクと煙を上げているお化け屋敷の方を見上げながら、げっそりと溜息を吐くのだった。
