スマホの画面を見せる母。



…母さん、今日は早いんだね…





今日は早番なのよ…





…それで、どうしたの?





私の代わりに、これをやって欲しいのよ…


スマホの画面を見せる母。



なにこれ…?支払画面?





そうなの!母さん、ネット通販ってやつに挑戦してみたの!





はぁ…で、これがどうしたの?





いやぁ…その、買ったまでは良かったんだけど支払方法がわかんなくって…コンビニでできるらしいからやってきてくれる?


んな面倒なことを…
なぜ調べてからやらないんだ…



あんた最近外でてないでしょ?たまには外の空気でも吸ってきなさい!


最後に外に出たのは…いつだったか忘れたな。
まぁゲームはしばらくメンテだし、丁度いいだろう。



わかったよ。その画面俺のスマホに送って。支払してくるからさ。





ありがと~♪お金は後で払うわね





ん、了解


さて…久しぶりの外なんだ。
じっくり外の空気を吸ってくるとしよう。



じゃあ、行ってくるよ!





いってらっしゃい!
なるべく早く帰るようにねー





…





えーと、とりあえずコンビニに向かえばいいんだよな





最近、人と話してないから、店員と話すときに声出るかな...





因みに、母さんはどんな物を買おうとしてるんだ?


ポケットからスマホを取り出すと、支払画面のスクリーンショットを見る。



ん?商品名は書いてないけど…父さん宛だな…プレゼントか何かかな?





とりあえず、コンビニに向かうとするか…


俺は公道に出て自宅の門を閉めると、コンビニ向かおうとした。
その時…



あら…貴方……。あぁ、確か!!津雲さん家の雅君!?!?


見知らぬセレブ風の女性が、声を掛けてくる。



誰…だっけ、覚えてないなぁ…。
適当に相槌打っとけばいいか…





あぁ…、お久しぶりです。え…っと、あの…ちょっと、コンビニに行く用があるんで…





あらそうなの?
ああ!!そう言えば、うちの家にイチゴが届いたの!!
あっまいイチゴが!!
よかったら持っていきなさいよ!!





ちっ、荷物になるじゃん…。でも、イチゴか…。た、食べたいかも…





頂いてもいいんですか??





いいわよ!!本当にあっまいんだから


そう言うと、その女性は俺の手を引き、その女性宅前まで俺を連れて行った。



さぁ着いたわ。ちょっと待っててね!





はい





ん…、名前見ておこう。えーっと…『林』さんか…。ごく普通の名前なのに、でっけぇ家だな…。近所にこんなでっけぇ家あったっけ…。





ていうか、俺の名前や容姿を知っているってことは、小さい頃、世話になったのかもな…もう、全然覚えてないや…





ごめん、ごめん…
イチゴこれしかなかったんだけど…
ごめんねぇ…





!!





…って言って5箱!?5箱も食べれねぇよ…
しかも、白イチゴって…どんだけ金持ちなんだよ!





母さん、こんなに貰い物したら、さすがに怒るだろうなぁ…とりあえず、電話してみよ…


”プップップップッ…”



使用料の上限が過ぎているため通話ができません…


…なっ。
今月使いすぎたか…



…一回帰るしかないな





林さん。ありがたく頂きます。今度、母とお礼に来ますので。





お礼なんていいわ。美味しく頂いてね!!





ありがとうございます!


俺は、林さんにお礼を言うと、一度帰宅することにした。
やっと、家に着いた…。
白イチゴ5箱とか重すぎだろ…。
俺はインターフォンを鳴らす。



…あれ?母さんいないのか?


仕方ないので、俺は持っていたスペアキーでドアを開けた。
部屋は電気がついておらず、誰もいなかった。



…母さん、どこかに出かけたのかな…





そう言えば、さっき『早番』って言ってたっけ…





まあいいや…コンビニ行こう


俺は白イチゴをキッチンに置くと、再びコンビニに向かった。
コンビニは、俺の家から歩いて10分程度の場所にあった。
途中、さっき白苺をもらった林邸へ続く分かれ道があり、そこを直進して桜並木の土手っぷちに出た後、左手に歩いていき、すぐに見えてくる橋を渡った先の交差点の反対側に、目的地のコンビニがある。
俺は『また林さんに出くわしたら大変だな…』と思い、裏路地を経由して桜並木が眩しい土手へと向かった。
桜並木の桜は満開を迎えていて、早咲きの木には新緑も垣間見えている。
お花見に来たのだろう、2人の保育士さんに誘導され、保育園児が『さくら~さくら~♪』と歌いながら、土手を行進している。



卒業してもう1か月が経つのか…母さんは許してくれているけど、いつまでもこの生活のままにはいかないよな…


桜吹雪に包まれながらそんなことを考えていると、いつの間にか橋を渡り切り、俺はコンビニの前にいた。
自動ドアを潜り抜け、店内に入る。



いらっしゃいませー


マニュアル通りのあいさつが俺を迎える。
とりあえず母さんのやつを済ませないと。
床に示されたレジへの整列順に従い、俺は並んだ。
2人の店員がレジで対応をしている。
そして、俺と前の人が同時にレジに案内された。



えっと…コンビニ支払…





はい?


…いかん、久しぶりに母さん以外の人と話しているせいで、うまく言葉が見つからない。
どうにか言葉を捻り出し、スマホ画面を見せながら店員に説明する。



これの支払いがしたいんですけど…





はーい、お支払番号をお願いします!


よかった、通じた!
画面に映し出された番号をそのまま伝えて、支払いを済ませる。
”きゅ~う ぐるぐる”
腹から出た音に、俺は思わず手をあてる。
そういえば小腹がすいたな…
昨日からずっとゲーム漬けだったせいで、腹がいい感じだ。



あ、あと…





只今、あんまんがセール中でお勧めでーす


あんまんか…久しぶりに頼むか。



あ、じゃあ





あんまんお願いします!!


その時、隣のレジから俺と同時にあんまんを注文する声が聞こえた…
第2話へ続く…
