今日、母さんは
オレに『友達』を紹介した。



今日は母さんの友達が来たのよ。


今日、母さんは
オレに『友達』を紹介した。



……。





え~っと。
ト、トナカイだよね……。
これ……。





こら!人さまに向かって「これ」とはなんです!?





あ、ごめ。ごめんなさい。
いやでも、人さまって……。
まぁ、いいかめんどくさい……。





……。





すみませんねぇ。よく言って聞かせますんで。
え?
「最近太陽光パネルが多いね」って?
そんな、話は今してませんよ。
いやだわ。都中さんって面白い方ね。





都中(となか)さんって言うのか……。
もうめんどくさいからトナカイで良いじゃないか……。





それにしても、今の母さんの返しって、なんかどこかで見た漫才のネタみたいだな……。
老人に扮した漫才師のなんだっけ……・





それはビーグル38って漫才師だ。
レッドカーペットにも出てたよな。





うわ!いきなりしゃべった!
ってか、オレの心が読めるの?
オレ今しゃべってないよね?





当たり前だ。ボウズ。
何年トナカイやってると思ってるんだ。





トナカイって何年やっても
人の心はわからないと思うけど……。





なんか言ったか?





い、いえ……。





心は読めるのに、耳は遠いのか……。
なんかめんどくさいな……。





うるさいぞ。耳は遠いのはしかたないんだ。
サンタクロースがクリスマスイブ中、オレの耳元で「急げ!急がんか!」って言ってたからな。あのジジイ。オレよりも世界中のガキの方が大事なんだ……。





ええ?都中さんって、あのサンタクロースのトナカイなの?





「サンタクロースのトナカイ”だった”都中さん」だ。今度から間違えるなよ。
それにサンタはあくまでオプションだ。
実際ソリを引いてるのはオレだ。
つまりオレがメインというわけだ。





そんな話聞いたことないけど……。





真実というものは、常に常識とは逆にあるものだ。
ふっ……。まだまだ青いな。ボウズ。





さあさあ、仲良くなったところで
ご飯でも食べましょう!
今日のご飯は特別で『焼き肉』よ!





おお!ラッキー!





ふむ……。いただこう。
私は草食に見えて肉食系なんだ。
今の30代~40代の男性みたいだろう?





どうでもいいよ……。





ちなみに、肉は鹿肉とか言わないだろうな?





もちろんよ。私がそんなカニバリズム的な発想するわけないでしょ?





いや、母さんならありえる……。





そうか。なら安心だ。
で、なんの肉なんだ?





それは、ヒ・ミ・ツよ!
うふふふふふふ。





もうやだ。この家……。


すると、その時……。
父親が帰ってきた。



やあ……。みんな……、元気かい?





あれ?父さん、お帰り。
どうしたの珍しく元気ないじゃん?





いや、父さんがなネットで買った30万円分の高級和牛がまだ届かないんだ。
楽しみにしてるんだけどな。





うふふふ。
サプラーイズ!





お!なんだ!母さん。知ってるのか?





はい!私実はあなたに内緒で、あなたが買った高級和牛で、なんと!
『熟成肉』を作ってたのよー!





熟成肉って、あの、今流行の?





そう。でも、あんまり作り方分かんないから、届いてから3日間くらい外に置いておいたの。
『熟成』ってそういう意味よね?





お。おお。。





か、母さん……。





そしたらね!びっくり仰天!
見事に熟成してましたぁ!!!
ほめてほめて!


母さんが出した肉は、完全に腐っていた。
もう、それは誰が見てもドン引きするくらいにね。
あ、そうそう。
都中さんだけは「ゾンビ肉だな」っていうコメントをちゃんとくれたよ。
さすが母さんの友達だ……。
