晩ごはん、ハンバーグプレートを食べきった穂波さまは、ふらふらしつつ、部屋に戻る僕の後をついてくる。



ふぅー、食べたのじゃー


晩ごはん、ハンバーグプレートを食べきった穂波さまは、ふらふらしつつ、部屋に戻る僕の後をついてくる。



階段で落ちないでくださいよ





ふん、落ちるわけ無かろ





だといいんですが





さて、お主の部屋を見させてもらおうかの





何もないですよ





あるかないかはわらわが決めるのじゃ





はいはい、着きましたよ


僕は自室のドアを開けた。



おぉー……ぉ





何もないでしょう?





いや、あるにはあるが、こう、普通じゃの


勉強机にベッドに本棚。あとは数個のクッションに、部屋の中央にあるこたつ。
それが僕の部屋の構成要素だった。



どどん、とアイドルのタペストリーとかあるのかと思っておったのじゃ





何時の時代ですか、それ……





ほんの50年ほど前じゃが





僕の生まれる35年前ですかーそれはわからないですよー


ハハハ、と笑いつつ、やはり時間間隔が違うのだなと納得した。



して、その机から布団が出ているのは何じゃ?





え?





それじゃ、それ





これですか? ただのこたつですが





はっは、バカをいうでない。こんな小さなこたつがあるか。掘っておらんこたつなど、どうやって中で焚くのじゃ





えっと


僕はこたつをひっくり返した。



ここの発熱部があるので、中で燃やさなくても、暖かくなります





……嘘じゃろ?





穂波さまが引きこもっていた数百年間の間に、こたつも進化したのです


しかも、DCEのおかげで完全コードレスになったこたつ机は、外のレジャーでも活躍できるすぐれものだ。



し、信じられんのじゃ……





じゃあ、実際入ってみては?


僕は机柱にある電源ボタンを押し、こたつを起動する。



よ、よかろう


穂波さまが足をこたつに入れる。
そして、とろけた。



ふあああ


きっとお風呂でも同じようなだらしない顔をしていたのだろう。
口元がゆるみきり、目尻も垂れ下がれ切っていた。



なんじゃぁぁこりゃああ、囲炉裏そばでもこんなに優しく暖まらんのじゃああ


すでに手足をこたつに入れて、体を全てこたつ机に寄りかかっている穂波さまは、立派なこたつ狐となっていた。



わらわ、ここでねるのじゃあ……





こたつで寝たら、風邪ひきますよー





神は風邪をひかんのじゃ





……そういえばそうか


妙に納得した自分がいた。
その夜。



……やっぱり暑いのじゃ





ぐえっ、穂波さま、上に乗らないでください





すかー


仕方ないので、僕はベッドで寝た穂波さまを起こさないように、こたつに移動した。
