移動した先は廊下で、フィリスに押し倒されるように床に倒れたキリシアが、
移動した先は廊下で、フィリスに押し倒されるように床に倒れたキリシアが、



何考えてんの!


怒鳴りながらフィリスを突き飛ばした。



危ないでしょうが! なんでついてきちゃうの!





エレナの仇を討ちたいっ!





あのねぇ、フィリス。気持ちはわからないでもないけどっ





フィリス


クリスも困ったように名前を呼ぶ。
だけど、納得できなかった。



友達の、ことなのにっ





有事の際に逃げ込むべき行動で、なんで生徒の魔法が使えないかわかる? あのこの学園で一番安全な鳥かごで、あなたたちを絶対に守る為なの。それは、あなたたちの魔法じゃ、あれに対応できないってことよ





でも……





それに、私たちにもできないの





え?





あれは封印することしかできない。倒すことはできない。悪いけど……


次の瞬間、背後から聞こえた唸り声に三人そろって振り返った。



来やがった


キリシアが舌打ちすると、ガーターベルトにつけていた銃を抜き、発砲。



一旦引くわよっ! 早く行って





フィリスっ!


クリスがフィリスの手を引くと、走り出す。
キリシアの手から続く、発砲音。



あ……


角を曲がるとき一瞬、黒い影が見えた。
空き教室に滑り込むと、一旦鍵をかけた。



はー


ドアに寄りかかって、キリシアが大きく息を吐く。



やってらんないわ





センセ、それ


クリスがキリシアの手の中にある銃を見て呟く。



なんだってそんな古い武器を……





あれは、WC粒子を食べるの。知らないわけじゃないでしょう? WC粒子が枯渇するわけじゃないけど、一時的にこのあたりの濃度が低くなる。っていうことは





魔法が使いにくくなる





そう。あれを封印するために、残しておかないと


言って、クリスと、クリスに手を握られたまま俯いているフィリスを見る。



だから、悪いわね。あなたたちを講堂に戻すわけにはいかないわ。思ったより、WC粒子の濃度、低くなっているし





……それはまあ、ついてきちゃったの俺たちですから





まあ、そうよね


そこまで会話して、二人は俯いたままのフィリスを見た。



フィリス、……大丈夫?





……クリス、キリシア先生





ん?





ごめんなさいっ!


そのままぐっと頭を下げた。



私、勝手なことして。迷惑かけて。本当に、ごめんなさい!





……フィリス





本当よね


キリシアのトゲトゲしい声が飛んでくる。



ちょ、センセ





テンパってたのはわかるけど、だからって許せないレベルよ、これ





はい、すみません





ごめんで済んだら私たちは警察はいらないの





センセ、そこまで言わなくてもっ





生き死にかかってんのよ、甘ったれるんじゃないわよ


一喝されて、クリスも黙る。



でもまあ、過ぎたことはしょうがないわ。一つ、約束なさい





はい





死ぬんじゃないわよ


近づいて二人の顔をまっすぐみるとキリシアは続けた。



この状況であんたらにまで死なれると、私、始末書じゃすまないから





……はい!





わかりました


素直に頷く二人を見て、キリシアは少し満足そうに笑った。
