ピーちゃんの活躍
ピーちゃんの活躍
タイムマシンが動きはじめた時、ラップの隙間から、寿司がいくつか飛び出した。



体が急に軽く……。


それで、周囲がモヤっとし出した。



うわっ!


ボクは居心地の良い畳の部屋から放り出された。



お姉ちゃん! お姉ちゃん!
お姉ちゃ~~~~ん!!!





寿司飛んでるし……。





ぴっ!





さっきの鳥……。


手元に寿司とピーちゃんが来て、ボクは咄嗟にピーちゃんを持った。



ぴ~?





「ぴ~」って泣くんだ……。


ボクはピーちゃんを胸にしっかりと抱きしめた。



ピーちゃん。キミの名前はピーちゃんだよ。





ぴっ(うん)





データ入力、完了。
名前の変更ができました。





ん?


吉良先輩でもピーちゃんの鳴き声でもない、機械的な声がした。



それは、鳥に元々入っている音声データです。





偶然ですが、鳥の名前の変更ができたみたいですね。





そうなの?





元々「鳥」がこのAIの登録名だったんです。たまたま悠真くんが「鳥」と呼んでいたから、悠真くんと鳥とのつながりができたのでしょう。





めったに起こることではありません。





亜光速で進んでいたことと、異空間だったことも関係しているのかもしれません。





明確な答えは、これからみっちりと調べて出します。





え?





ピーちゃん大丈夫?
壊したりしない?





大丈夫です。





う……うん。





それで、タイムマシン内でどんなことが起きてたんだい?





あ、はい。





うわっ。
圧がすごい……。


鼠色のツナギを着ていたけど、けっこうつぶされる感があって、ボクはピーちゃんをギュッと胸元で抱きしめたんだ。



ぴっ……(ちょっと苦しいよ……)





あ、ごめん。





ぴっぴぴぴ(ボクのお腹を持って)





え? お腹?


ピーちゃんはマルっとしていたから、どこがお腹かわからなかった。



ぴぴぴ(ここだよ、ここ)


ボクはピーちゃんの示す場所を持った。
翼の下くらい。



これでいい?





ぴっ


ピーちゃんはうなずいた。



ピーーーーーーーーー(離すんじゃねえぜ)。





え?


ピーちゃんはそう言って、さらに加速したんだ。



わっ!


ちゃぶ台の部屋は、ボクの視界から消えた。
その背中の小さな翼を大きく広げ、ピーちゃんは飛んだ。
大空ではなく、長く暗いトンネルのような場所を。



一時間って言ってた。
吉良先輩は一時間って言ってた。





頑張れ、頑張れボク……。
耐えろ、耐えるんだ……。





ぴ(怖い?)


いつ終わるとも分からない道(たぶんワームホールなんだと思うけど)を進んでいると、ピーちゃんはボクに話しかけてきた。



うん。


ボクはうなずいた。



ぴぴぴぴぴ(大丈夫だよ。ボクは必ずみんなのところに連れて行くから)





ピーちゃん……。





ぴぴぴ(さあ、もうひと踏ん張りだ)





うん!


こんなに心強いことはないって思ったよ。
そして、ワームホール(仮)を抜けた。



ワームホールというか異空間です。走行する距離を稼ぐための場所です。





へー……。





ワームホールを通って異空間に行き、そこで亜光速になり、またワームホールを通って戻ってきたはずです。


すごいとこ行ってたんだな……。
それで、トゲトゲもやっとした場所(異空間らしい)を抜けて、戻ってこれたんだ。



あれ? ここは?





ぴぴ(ボクのお家だよ)





ぴっぴーぴ(ここが一番降りやすいから)


ロボットの頭のところにピーちゃんのお家があった。



悠真! 悠真!


下からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。



お姉ちゃんだ!





帰って来たんだ……。





ピーちゃん、ありがとう。


ボクはピーちゃんをぎゅーっと抱きしめた。



ぴぴ(ふふふ。大したことはしてないよ)





そんなことないよ、ピーちゃんのおかげだよ。





ぴぴっぴ(さあ、みんなのところへ戻ろう。僕のお腹をもう一度持って)。





うん。


ボクがお腹を持つと、ピーちゃんは畳の部屋に連れてきてくれたんだ。
