突然、フェイールが大声を上げる。
そして、満面の笑みでアルエットに飛びついた。



あなたがシャンス・スーリールさんね?





私はアルエット・コネッサンス。今日はサジェスの代理で来ました。よろしくね





……………………





アルエット・コネッサンス!?


突然、フェイールが大声を上げる。
そして、満面の笑みでアルエットに飛びついた。



あのサジェスさんと気球を発明した天才魔法使いですよね!?私、大ファンなんです!握手してもらってもいいですかっ?





え、えぇ…………


元々引っ込み思案なアルエットにとって、グイグイ来るフェイールはあまり歓迎できる存在ではないだろう。
しかし、それでもブンブン腕を振り回されながらも必死な笑顔で対応する姿は、シャンスには滑稽に見えた。
二人きりで話がしたいとアルエットがお願いすると、フェイールはあっさりと席をはずしてくれた。
アルエットはシャンスと向かい合う。



やっとちゃんと話せるわね。サジェスから話を聞いてから、ずっとあなたに会いたかったの





帰ってください





そうやって人を突き放すのは何故?仲良くなるのは怖いから?





帰ってください





ほら、さっきと全く同じ言葉。まるで怯えてるみたい





別に怯えてなんかいません





なら、どうして私と目を合わせないのかしら?





……………………


さっきからずっと挑発的な口調のアルエットに対し、シャンスは何も返さない。
どうして、こんなに意地悪く言われなければいけないのか分からなかった。
まさか、この前のサジェスのことに対する嫌がらせだろうか。
もしそうなら、この「天才コンビ」とはとてもおめでたい仲なのだなと思う。
しかし、アルエットの言うことも間違ってはいない。
シャンスはさっきから、まともにアルエットの顔を見れていなかった。



サジェスの時も一緒だったそうね。相手の目を見ずに、ただ「帰ってください」を繰り返すだけ。それは興味がないのか…………





それとも、持たないようにしてるのか





……………………





でも、毎日しつこいくらいに訪ねて来られたら、普通人の反応は二つよね





いい加減にしろと癇癪を起こすか、徐々に惹かれて興味を持つのか…………あなたはどっちかしら?





そんなの……………………


前者に決まってると、シャンスが答えるより早く、アルエット自身がこれを否定する。



少なくとも、貴女は前者はないわね





なっ…………………!





だって、癇癪を起こしてたなら、とっくにサジェスを出入り禁止にしてるはずでしょ?





………………!!





あなたはいつも「帰ってください」っていうだけで、「もう来ないでください」とは一度も言っていない





それは瞬間的に距離を遠ざけてるだけで、相手の干渉を拒絶していないから。本当に干渉を恐れる人は、そんな半端なことはしないわ





な…………なんで………………





なんでそんなことが分かるのかって?簡単なことよ





私と貴女は、似てるから





似てる…………?





たとえば、サジェスのことが好きなところとか?





別に好きじゃありません!!


思わず叫んでしまった。
遅れて気づいたシャンスの顔が紅くなる。
そして、その様子を見てアルエットはクスクス笑っていた。
シャンスが睨んでも、一切やめようとはしない。



ねぇ、シャンスさん。考えてみて





貴女はどうなりたいのか、一方通行とはいえ、サジェスと接したことで何か変わったことがったはずよ。それを、自分自身に聞いてみて





きっと、意地を張らない本当の自分が現れると思うわ





……………………


また来ると言って、アルエットは去っていった。
入口から様子を見ていたフェイールは、慌てて見送りに行く。
シャンスはこの時、「帰ってください」と言えなかった。



………………………………


シャンスは、自分が小さな期待を抱いていることに、この時気づいた。
それは、サジェスの頃から、後姿を見送りながら感じていたことだった。



あの、アルエットさんっ





はい?





シャンスさんとどんなお話をされたんですか?





シャンスさんがあんな風に叫んだの、初めて見たので…………





…………あぁ


ついさっきのことだと分かり、アルエットはまた吹き出した。
あのシャンスの照れた顔は、本当に傑作だった。



別に、特別なことはしていませんよ





ただ、彼女には、私のようになってほしくないだけです





私のように…………?





シャンスさん、貴女はすごく幸せよ





サジェス・エフォールという「天才」魔法使いと友達になれるんだから





………………………………


To be continued...
