「小さいおじさんの伝説」
「小さいおじさんの伝説」
インターネットの情報によれば、中年男性の小人(こびと)がいるというものであり、主に自宅や公園、道端で目撃するという。
身長は大体10センチ程度、出会った者に幸せを呼ぶと言われている。



んー、妖精って何食べるんだ?





俺は何でも食うぞ。昨日はあんたの部屋のゴミ食べたし!





うそだろ……


土曜日のスーパーには人で溢れている。
そんな中、誰もこのおっさんに目を向けないということは、本当に見えていないのだろう。
「人生に悲観した一部の者にしか見えない」、昨日おっさんが言ってた言葉だ。
俺はいつまで、このおっさんに付きまとわれるのだろうか・・・。



とりあえずこれだけ買えばいいか





わーい! ヨーグルトだぁ☆





へぇ-、好きなんだ?





いや、特に普通ですが





金藤ちゃんの好物だろ?





こいつ……。てか今の木葉の真似か!?





ゆうたぁ♡





ううぇえ


こうした他愛のない会話を繰り返しながら、俺たちはゆっくりスーパーを後にした。
帰りの途中で、うさぎの着ぐるみを纏ったアルバイターが子供に風船を配っている。
「俺もほしぃー」という声が聞こえた気がしたが、とりあえず無視している。
しばらく歩いていると、建物の看板に一つの風船が引っかかっていて、それを5歳くらいの子供が見上げている現場に遭遇した。



……





あちゃー、あれは無理そうだな





本当にそう思うか?





どういう意味?





人間というものを何千年も見てきたがいつも思ってしまうよ、勿体ない生物だってな
すぐ自分の限界を判断しようとする





いくら何でもあの高さは無理だろ





それが勿体ないって言ってんだ!





え?





まあ見てな、「妖精の力」ってやつを見せてやるよ





お、おう……


すると妖精(白沢)は俺の目の前で意味不明な呪文を唱え始めた。
途中途中に「枝豆」やら「トマトジュース」やら聞き覚えのある単語が出てきたが、深く考えないようにした。
てかお前羽あるから飛べるるんじゃ?
飛んで取ってやれよおっさん。



・@w、wx@]ピーマン」ck@c!!!!





あのー、いつまで続くんすか?(今ピーマン入ったな)





ファイアー!!!!!!





ファイアー言っちゃったよこのおっさん!





ふーー





どう?





さあ、もうこれで大丈夫! 跳んでこい少年!





あんた何言ってるんだ?


頭おかしいのではないだろうか?
このおっさんは俺に跳んで風船を取れと言っているのだ。
そして、先ほどまでのどうでもいい呪文のくだりはどうなったのだろうか。
俺にはこの生物の考えていることが理解できなかった。



大丈夫だ、お前に魔法の言葉をかけてやった。お前はきっと跳べるはずだ





本当だろうな?





ああ、俺を信じろ





信じたくないなぁ……





行け!





ええい! どうにでもなれ!!


バッ!!
次の瞬間俺の目の前には、喫茶店の大きな看板があった。
横には風船が絡み、引っかかっている。
自分には理解しがたい光景だった。
俺……跳んでる!
いや、浮いてる!?



えええええ!!!!!





!?





それがお前の潜在能力……


「可能性だよ」
第三話『能力』 終
