


高円寺さん!





大丈夫か…





それよりシンが…





…これは





眠っているだけです





だが…





高円寺くん。よく聞いてほしい


高円寺はシンをスルトウの憑依から救う
唯一の方法を聞かされた。
異次元の果てにある『チナトゥの木』
のところまで行かなければならないこと。
扉の向こう側は時間の流れが速く、
シンを救い、扉の元に戻ってこられたとしても、
本間博士たちと再会できるどころか、
人類が存在しているかどうかさえ
定かではないということ。



…





『チナトゥの木』までは私が連れていくことができる。だが、お前たちのいない世界に戻ってきたところで意味のないことだ。
だからこのまま…





僕も行きます





なにを…





僕も一緒にその木のところまで行きます。コロック、案内を頼む





人類の危機は過ぎ去った。シンは自分の身体を犠牲にして世界を救ったのだ





君までも自分を犠牲にする必要は…





約束したんです





…





僕がずっとそばにいると。
もしこちらの世界に帰ってきたときに人類が滅びていようが、僕はシンのそばに居続ける





…





そういうだろうと思っていたさ





…博士





寂しいなあ…。
シンのためなら僕らに会えなくなっても平気なんだな





いや…。そういうわけでは…





…





行ってこい





え





あの扉のことはまだ全部わかっちゃいない。もしかしたら、すぐにでも帰ってこれるかも





…





シンにはお前が必要だ





いつまでもお前とシンの帰りを待ってる





博士…





まだ超能力の決着は付いてないからな!絶対帰ってこい





…はい





では行くか…





はい





じゃあなー!





高円寺さーん…





またねー!





行っちゃいましたね…





ああ





すぐに帰ってこれるかもというのは





…絶対にないだろうな





…





博士はこれからどうするんですか…?





…





さあね





この部屋には来たことがあったな





うん。でもこの部屋の外は初めてだ…





シンを背負ったままだが、重くないか? なんなら代わってやっても





いや、大丈夫。このままで行くよ





心の準備はいいか?





うん





では…


コロックが拳を壁に突き立てた。
意外にも脆く崩れた壁の向こうに、
禍々しい色をした荒野が広がっている。



さあ長い旅の始まりだ


僕らはひたすら歩き続けた。
日にちの感覚など、とうに消え失せた。
昼も夜もない世界。必要はなかった。
そして…



あれが…





チナトゥの木だ


