そして別の日。
そして別の日。



ねえ! 西岡杏月って子、呼んで


数人の女子が杏月ちゃんを呼び出した。



私?





ちょっと屋上へ来なさいよね





あんた、宮川くんの何なの?





何って、クラスメイト?


杏月ちゃんはフェンスに叩きつけられた。



彼女面すんの止めてくんない?





え、別にそんなつもりは





お前ら! 何してんだよ





いや、ちょっとお話ししてただけで……





大勢でよってたかって弱いものいじめすんなよ!





ちがっ……





いこっ……


こうして女子たちは去っていった。



もう! 余計ややこしくなるから止めてよね!





あんたがいつも俺にやってることじゃねーか





ハッ!!





ハッ、じゃねーよ!!





でも





嬉しかった……ありがとっ





どうしたの?





なるほど! これか!





?





あんたが人助けをする理由がわかったぞ!





ありがとうを言われた瞬間に胸に走った、この快感のためだな!





え、まあ、確かに言われたら嬉しいわね





自分だけ良い思いをしてたなんてズリーぞ!





人に何かをして喜んでくれるのって、幸せだよね





そうゆうことだったのか……!





それがお前らの……やり方かー!!!


この胸ドキンチョが、恋する瞬間だったと気付くまでにはだいぶ時間がかかったが。
医学的にも、ありがとうを言ったり言われたりすると本当に快感物質が脳から出るらしい。



杏月ちゃん、弁当作ってきてやったぜ





あるからいい





杏月ちゃん、絆創膏いる?





怪我してない





杏月ちゃん、服縫ってあげようか





破れてない





杏月ちゃん、オレの子供を……


そのへんからの記憶は曖昧だが、人目はばからずお節介を振りまく彼女に、オレは恋をしたのだった。



なるほど、宮川の半ば押しつけな気配りは、そうゆうとこから来てたんだねー





そう、杏月ちゃんのおかげで今の本当にカッコいいオレがいんだよ





まあ、その偽善がよく女子に勘違いさせてるけどねー





偽善言うな!





へー……でもホントに良い子っぽいわねその子


