薄暗くて良く見えないが、床からカシャンと軽い音がなった。
足で何かを開いたようで、ぼんやりと階段が見える。
そこを降りていくと扉が見えた。



はぁーぃ、此処から降りまーっすぅ


薄暗くて良く見えないが、床からカシャンと軽い音がなった。
足で何かを開いたようで、ぼんやりと階段が見える。
そこを降りていくと扉が見えた。
今度は足を使うわけにもいかず、露種の代わりに俺が扉を開く。
中は電気が付いていて、さっきまでと違い埃っぽさはなく真っ白な廊下に扉がいくつもある。
右の方に広い空間が見え、そちらに足が向けられた。



たっだぁいまーっ!





おかえり、露種





っ…


そこには、テレビに大きな机にソファが並んでいた。
共同のスペースとして使われているんだろう。
ソファに座ってテレビを見ていた青年が露種に顔を向けそう言葉を返した。
その青年の腰のあたりに、一本の真っ黒な尻尾が生えている。
気のせいにしては確かに、幻覚にしてはくっきりと、普通の人間には無いだろうものが真っ黒な服に紛れてそこにあった。



ほらほらほらーぁっ!ちゃーんとぉ連れてきたぁーっ!





良くできたね、偉い偉い。弟を連れてこようか





テイテイテぇーイーっ!





うっせぇっ


声が聞こえ、露種ごしに後ろを見ると先程の彼と対象に真っ白な可愛らしい女の子がいた。



露種っ!もういいだろ、下ろせよっ


小さくて綺麗な女の子に男に抱えられている姿を見られるのは流石に堪えられない。
染めたにしては綺麗すぎる真っ白な髪や彼女が出す空気から、普通の女の子ではないだろうことは分かる。
しかし、可愛らしい姿をしているのはたしかで頬が赤くなってしまい、服で気持ち隠しながらなんとか露種の腕から逃れる。



黒ちゃーん、あんま暴れるとあーぶねぇじゃーんっ





黒、だっけ?強引に連れてこさせてごめんな


やはり、可愛らしい見た目や声に似合わず男らしい話し方をする。
露種の存在が大きいせいか、まだ彼女等はまともに見えてきて落ち着いていられるのが不思議だ。



テイ酷ぉーい、強引とか良くなぁーいっ!





お前のせいだろ





俺俺俺は悪くなーいもぉーんっ!





俺…、黒じゃないんですけど


ずっと内でもやもやとしていたことを、小さい声ながらもやっと口にすることができた。



え、黒じゃないの?





はっ?おい露種っ!


黒い尻尾の青年と真っ白な女の子が何故か露種を振り返る。



黒ちゃん黒ちゃんっ、黒いから黒ちゃぁーんっ!ひゃはははっ!





ごめんね…。俺は兄、君の名前は?


苦笑が浮かんだ顔で、尻尾の青年は兄という名前だと名乗った。
今までの会話から、黒い尻尾が生えているが露種と違い常識人であることが分かり若干の緊張をとく。



出水、潤壱です





よろしく、潤壱


お互い微笑みがもれ、握手をした。
見た目や雰囲気的に、たぶん彼は年上だろう。



もう知ってるだろうけど俺は弟、よろしく





…よろしく





ケイとテイはぁ、兄貴の兄に愚弟の弟ーって書くんだよぉーんっ!





他に例あっただろっ!何で愚弟なんだよふざけんなっ!


会話の流れで彼女の名前は分かっていたが、弟という漢字を書くのに疑問を感じた。
一人称については男らしい性格の子なんだろうと理解できるが、どう見ても女の子なのに弟…?



潤壱、そろそろ本題に入ろうか





あぁ、はい…





お茶の用意をしてくるから、少し座ってて


兄さんは、言い争っている二人を慣れたように放置して奥の部屋へ入っていったので、俺はソファに座りテレビを見ていた。
普段は見ないニュース番組だったが、勝手にチャンネルを変えるのも悪いかとそのまま目を向ける。
最近この近くで、謎の焼死が増えているという内容だった。
部屋でテレビを見ていた50代の男性が、買い物帰りの道端で30代の女性が、公園で遊んでいた5歳の少年が、というような感じで、火元はもちろんわかっていない。
今日の事件で7件目だそうで、目撃者は沢山いるが全員が口を揃えて被害者は誰に何をされたわけでもなく突然発火したという。
昨日の朝もこの事件のニュースを見た気がする。
突然の焼死。
自然に起こったのか誰かが意図的に起こしたのかもわからず、警察も手をやいているらしい。



潤壱?


兄さんに声をかけられ、振り返ると両手にマグカップを持っていた。



紅茶でいい?





あぁ、すいません


温かい。
一口飲むと、内から温かさが広がった。



おいしい?





はい、美味いです





よかった


素直に答えると、兄さんはふんわり微笑む。
立派な黒い尻尾が生えていなかったら普通に良いお兄さんにしか見えない。
残念だ…。



本題って…


露種達はまだ言い争っている。
そのうちにと、一番話やすそうな兄さんに尋ねる。



潤壱は、良くないものに好かれちゃってるみたいなんだ





良くない、もの…?





今のところ危険は無いから大丈夫





そうですか…


良くないものって、露種か?
他に思いいたらない。
大丈夫だと言われても安心できない。
態々此所まで連れてきたってことは、やっぱりそれなりに危険なんだろう。



これからは何かあったら此所に来て、道はわかる?





はい、家近いし大丈夫です…





もし迷ったら露種に電話しな





…は、い


兄さんは凄く親切で、改めてどうしてこんなところにいるのか何故角が生えてるのか疑問に思う。
