


ふふ





楽しいな





そうだね





ずっとこんな時間が続けば良いのにな





私も同じ事を考えていたよ


っやばい。
今凄くドキッとした。
胸がときめく。こんなの初めてだ。



王子……俺は──!


勢いに任せて告白しようとしたところで、ある一点が目に入る。
それは時計だ。
見ると時間が、午後の十一時五十五分になっている。
……!
やばい! 残り五分で魔法が解けちまう!
そうすれば継父たちに俺の事がばれる……どころか、俺がどこの馬の骨とも分からない貧乏人だって事がばれちまう!
それはそれで騒ぎになるし面白いと、今朝までの俺は思っていただろう。
だけど! この王子様にだけはばれたくない!



悪い、王子





……え?





時間だ


丁度曲がクライマックスに差し掛かった頃、そっと手を放しその場を離れる。



待ってくれ! シンっ──!


王子が何か言っているが聞こえない。
今は早く、城を抜け出さなければ。
俺の背中を追う王子。
くっそ! 途中で解けたら終わる!
早く、早く外へ!



残り二十秒よ! 急いで!!





おらあああ!!


門へ向けて出口から伸びる階段を一気に駆け下りる!



っ!


途中靴を片方落としてしまうが、拾っている暇はない!
どうせ魔法が解けたら消えるんだ! それより今は──!



待ってくれ!





っ!


王子が追って来やがった!
くっそ、その気持ちは凄く嬉しいのだが、今は逆に──!



残り十秒!





おおおおおっ!


階段を一気に跳んで門へ転がる。
おかげで服がぼろぼろだが、どうせこれも魔法で消える!
かぼちゃの馬車に駆け上がるように乗車する。
そして、魔法の時間が終わった。
こうしてオペレーション・シンデレラは終わりを迎えた。
