


君ってワガママを言うことってあるの?





ない。





そこまでシンプルな答えが返ってくるとは思わなかった。





というのはさすがに言い過ぎなのだろうな。
正確に言えば、
『無いと良いな、無いように努めている』
くらいなのだろう。





君は本当に高校生なの?
僕なんて毎日いろんな人に甘えちゃってるっていうのに。





日々人として精進に努めてはいるが、しかしながらまだまだ若輩のそしりは免れないよ。
誰かに甘えることなく、しっかりと自分のことくらいはできればいいのだが





まったく器がでかいなぁ、君は。
それでもさ…
僕にだけは甘えても良いんだよ♡





嫌だ。





えー!?





君には甘えるんじゃなくて、
甘い声で愛を囁きたいたいんだ。





う…





などといつもの私ならば言うのかもしれない。
だけれど、たまにはシリアスな雰囲気を一緒に楽しもうじゃないか。
私は君に甘えない。
それは君が好きで大好きで、とてつもなく愛しすぎちゃって、君の負担になりたくないというのもある。1%くらいの割合である。
だけれど、すまないが99%は紛うことなく自分のためなんだ。





シリアスな会話…
僕は頭が悪いから、あんまり得意じゃないんだけど。
ふざけ倒しのラブコメディーの方が僕には向いてると思うし、シリアスが似合う二枚目を気取ったらそれこそ笑いものというか…





でも、それでも、
君がそういう風にしたいというなら、僕はちゃんと聞く、ちゃんと応えるよ。





君のためシリアスになって、それで周りの人まで笑顔にできるのなら、そんな嬉しいことはないしね。
三枚目本望に尽きるってもんだよ。





ありがとう。
君のそういう柔らかいくせして曲がらないところは本当に大好きだぞ。





私はな…
他人の幸せが妬ましい。
自分が幸せでない時に人の幸せなんて願えないんだ。
この言葉だけで、君が思っている以上に私の器が小さいことが露呈するだろう。
それくら些末な人間なんだ。





だからこそ私は、
私に責任を持ちたいんだ。
私の言動に、
私の行動に、
私の生き方に、
そして何よりも私自身の幸せにだ。
私は私の力で幸せになりたいんだ。
他の誰でもなく、そして君でもなく、
自分自身の力で、自分を幸せにしてやりたい。
他人に依存して、他人の言動や行動で揺蕩ってしまうような夢や幻のような幸せではなくて、自分の目でしっかりと見えている幸せをこの手で掴みたいんだ。





自分が幸せじゃないと、
他人の幸せが願えない…





自分で言ってて嫌になる…





だが、だからこそ、せめて私は…
いつでも幸せで居られる自分で。
誰のことも妬まずに済むように…





嫌いになったか?





……





ぷっ…





あははははっ…





なんだ、なぜ笑ってる。





僕はやっぱり君のことがだーい好きだなって思ってさ。





なぜだ、なぜそうなるんだ。
むしろ嫌いになるべきだろう。





だって、君気付いていないけれどさ、
他人の幸せを十分に望んでるんだもん。





なんでだ、どういうことだ?





自分が幸せじゃないと他人の幸せを願えない。
逆に言えば、自分が幸せだったら他人の幸せを願えるってことでしょ?
で、君は他人の幸せを願うために、願いたいがために自分の幸せを望んでるって…





結局は他人の幸せを望んでるイイ奴じゃん。





!?





自分の幸せを第一に考えるなんてみんなそうだし、僕だってそうだよ?
それに僕は、それは仕方ないことだって思ってた。どうしたって物事には優先順位があって、時には人の幸せを願えない時もあるんだって。





それなのに君は、そのさらに向こう側にいた。
いつでも他人の幸せを願えるように、自分をいつでも幸せに出来るようにしよううだなんて考えていた。





惚れ直さないわけがないじゃないか。
大好きだよ、本当にもう痺れるぐらい愛してる。





そんな風に考えたことなかった。
自分はさもしい人間だとしか思えなかった。
それなのに君は…
君という奴は…





どうしよう言葉にできない。
唇が腫れ上がるほどキスしたい。





さっきニンニクてんこ盛りチャーハン食べたばかりだからダメ!!





ははっ、そのロマンチックの欠片もないあたりはさすがだな。





ただもう好きすぎて、
これからニンニクの香りを嗅ぐたびに、君とのキスを思い出せるならそれでもいい気がしてきたくらい私は今情熱に溢れているぞ。





その思い出され方こそロマンチックの欠片もないよ!!せ、せめて歯磨きとブレスケアした後にして…





まぁ、キスは置いておいたとしても、
本当にありがとう。
なんだかスッキリしてしまった。





よーし、幸せになるぞー!





あ、なんだかいつもと違う感じのしゃべり方で可愛い。





うるさい永久三枚目。
いっそ三枚におろされろ。





ひどいイヂワルだ!





でも、君の話を聞いて僕も自分の幸せにはしっかり責任を持とうって思ったよ。





恋人らしく甘え合う関係じゃないかもしれないかもしれないけれど、
どちらかが引っ張るんじゃなくて、隣を並んで一緒に歩いていくのも良いかなって思う。





そうだな。
そんな風に一緒に過ごせたら素敵だな。





よーし元気に帰るぞー!!





まったく。君はいつも元気だろう。
そして、元気すぎて大概転ぶだろう。
あ、やっぱり転んだ。
勢いつきすぎて転がっているし。
転がりすぎて一回転しているし。
あー、イイ感じに立ち上がった。





うわーイッタイよ!!!





君は転びすぎて転ぶプロになりつつあるな。





い、痛すぎて動けない…





まったく。
どちらかが手を引くような交際はしないっていった矢先にこれだ。





隣に立っていたら手を引くことはできない…
けれどまぁ、背中を押してやることはできるかな。
そら帰るぞ、恋人さん。


