~ つづく ~



アイドル大賞を決める歌謡祭…
会場もだんだんと広くなってきましたね。お客さん何人いらっしゃるんでしょうか





みんなの心をひとつに合わせれば、きっと大勢のお客さん達に心を届けることができるはずです!





ココロ…? そんなものは無意味です。単なる有機的パルスの連鎖… 脳が夢見るバグ・コンプレックスです





心 魂 気合 根性 愛 友情…
そんなものは感情の関数にすぎない。そんなもので勝利することは不可能…





博士の最高傑作、トキコⅢの処理能力なら、このアリーナ全体のファンの感情係数を最適化することも可能です





は…初めてロボットらしい言動を…
でも、心をデータ化するなんて、簡単にはできないって思いますけど…





人間もまたタンパク質の機械にすぎない。ヒトの心よりも、トキコⅢの人工頭脳がはるかに優秀だと証明しましょう





私の人工頭脳にはすでに、このアリーナの観客のデータがすべてインプットしてあるのです





ま…待ってください、インプットって… まさか今日の観客全員の顔と名前を覚えているってことですか!?





そ…そんなこと人間にできるはずが… まさかトキコちゃんは本当のロボット…?





いや…違います! これは恐るべき努力と執念…その結果! アイドル大賞歌謡祭のためにそこまで…!





私は情報を吸収し、成長しました。その結果、学んだのです





勝利に必要なのは心ではない。圧倒的な情報量とその処理能力… 精神論では頂点に昇れないのです





もちろん、あなた達のデータもすでに取得済みです。私の勝利確率は99パーセント…!





さあ…勝負です。アイドルの頂点に立つ者は人間か、それともロボットか…!





プロデューサーさん、トキコちゃんの言っていることはよくわかりませんけど、このライブ、絶対に負けられません!





やりましたね、プロデューサーさん!
やっぱり最後に勝つのは、熱いハートです!





そんな…どうして
私のデータは完璧だったはず…
なのに私の予想を上回るなんて…





まさかあなた達は、ライブの中で成長したとでも言うのですか?





人間は生きているその一瞬ずつに成長していくものなんですよ、心と心を通じ合わせて…





心…それは単なるバグでしょう
今も私はライヴの敗北による『悔しさ』というバグに苦しめられている





…敵グループのプロデューサーが私に何か言うつもりですか?





え…?
『悔しさ』以外のバグはないのか…と?





…あります
大舞台で歌えたこと、ファンの声援、強敵との出会い、それら全ての『喜び』が…





この『気持ち』強く育てて、いつの日かあなたがたと再戦しましょう





人間らしい感情を手に入れて、私はもっと強くなりますから!





その調子です、トキコちゃん!
トキコちゃんとの再戦の日、楽しみにしていますね!


~ つづく ~
