僕がその女にはじめて出会ったのは、大学のサークルの先輩から誘われたオフ会だった。
僕がその女にはじめて出会ったのは、大学のサークルの先輩から誘われたオフ会だった。



なぁ、土曜ヒマか?





え? なんですか突然……





オフ会来ないか?





オフ会?
ああ、先輩がやってるニコオコの?





そうそう、女の子も来るよ?


オカルト研究会の先輩、村本さんは『ニコオコ動画』という動画サイトで、怪談話の生放送をしていて、わりと有名な人だった。



僕も行っていいんですか?





もちろん、オマエ前に来たがってたろ?
それにさ、凄いヤツが来んだよ、今度のオフ





凄い?





他人の死がわかるってヤツ





死?





方法までは聞かなかったけど、人が死ぬのがわかるんだとさ、面白くないか?





へー……


その時は、どうせそんな事ウソだろくらいにしか思ってなかった……。
土曜日
オフ会は、夕方から繁華街のカラオケ店で行われた。
この日、集まったメンバーは6人。
僕、村本先輩ことツクヨミ(動画サイトでの先輩の名前)。



怖い話マニアだという
フリーターのキヨ君


それから、先輩の動画のファンだという女の子たち、



高校生のサキちゃん





OLさんだという香奈恵さん。


そして、例の……



死がわかるというアザミという女。


僕は、アザミに違和感を覚えた。
アザミは年齢は恐らく20代後半だろう容姿だったが、セーラー服姿に髪型もなんだか幼い感じだった。



それでは、第2回のツクヨミ怪談オフをはじめたいと思います


メンバーが揃うとささやかな拍手の中、会は始まった。



それじゃあ
一人ずつこちらから指名しますので、まずは自己紹介してもらって
一人一つ何か怪談話をお願いします、ではまずは宮田から……


最初に指名されたのは僕だった。



えっ、えっと、宮田です。
村本さん、あっ、ツクヨミさんの大学の後輩です、よろしくお願いします……


軽く自己紹介を済ませ、僕はネットでみた怖い話をした。



じゃあ、次は~……サキちゃん





あっ、はい、はじめましてサキです。
高校2年生です。
えっと……いつもツクヨミさんの動画を観ています。怪談話が大好きです!


女子高生のサキちゃんは、自分の学校に伝わる七不思議の話をした。
そこから、OLの香奈恵さんが会社で残業していた時にあった怖い体験、フリーターのキヨ君はバイト先の先輩から聞いた怖い話と、みんな結構面白い話をしてくれて、会は中々盛り上がり、いよいよこの会のメインイベントともいえる例の話となったのだ。



じゃあ、最後にアザミさんお願いします





…………はい


アザミは、僕たち一人一人の顔をゆっくりと見た。
そして、こう言った。



私は、人の死を予言することが出来ます





死を?





うそ?





マジかよ?


みんなの視線がアザミに一気に集中する。



初めてそれがわかったのは、父が死んだ時でした……
夢の中で父が死んだんです、たくさん血を流して、恐ろしい形相で……その夢を見て一週間しないうちに、父は亡くなりました





……死ぬことを夢で見る……って事ですか?





はい……そうです。
続けて、祖母の夢と当時担任だった先生の死ぬ夢を見ました……
二人とも夢で見た通りの状況で死にました……





予知夢ってやつですか?





そうですね、そう呼ばれてるものかもしれません……けれど、私の予知夢は死に関することのみです


アザミの話は普通なら信じられないような事なのに、彼女が言うと何故か不思議と真実味を帯びているように感じられた。



それって、知ってるヤツだけなの?





いいえ、知らない人の死ぬ夢も見ます。
後々、ニュースでその死を知ったり、もしくは後でその方と知り合って死を目の当たりにしたりもしました……





へ~っ……じゃあ、今日ココにいるメンツの中にこの人の夢に出て来たヤツがいたりしてな





えっ!?





ちょっと、やだ!


苦笑いする僕らに、アザミはとんでもない事を言った。



……いますよ





はっ!?





えっ!? ヤダっ!!





ウソ……





……本当ですか!?





誰だよ!?
おっ、教えてくれよ!





…………いいですよ


今考えれば、その時からアザミを取り巻く空気は何かこの世のものじゃない狂気さをはらんでいた。



わ、私は聞きたくない……





わ、私も……





気になるじゃん!
誰なのか知りたくないのかよ!?





……そりゃあ、まぁ、そうだけど……





や、やめましょうよ……





おい、宮田オマエはどう思う?


その時の僕は、なんだかコレを知っておかなければいけないという、好奇心とは違う使命感みたいなものに突き動かされていた。



僕は……し、知りたいかも……





よし、じゃあ3対2だ……
それが誰なのか、教えてもらえますか?


アザミは、またじっと僕ら一人一人の顔をゆっくりと見ていく。
その瞳は何か異形のものに見つめられているような、底知れない不安に押しつぶされそうになるそんな目だった。



…………それは


シン……と部屋中に沈黙が流れる。
そして──



アナタです……





えっ!? オ、オレっ!?


指を指されたキヨ君は、びっくりしてその場で立ち上がる。



いやいやいや、冗談だろ?
つかっ、死ぬってみんなそりゃいつかは死ぬし、何年先の話なんだか……





一週間以内です。
アナタは今から、一週間以内に死にます……





はっ!? なんで!?
意味わかんねーんだけど……


キヨ君は明らかに動揺していた。
自ら知りたいと言っていたのに、それが自分だとわかった途端の落胆といったら滑稽にさえ見える。
周囲はそんな彼をなんとか宥め、その日の会はなんとか終わった。
みんながその場で解散となり、散り散りになって行く中。
僕は、聞いた。



…………死出への旅は避けられない……


そう、アザミがポツリと言った事を……。
