翌朝、いつものようにベッドを抜け出したアキラとアサヒは、予定の場所でショウコと合流を果たすと、そのまま食堂で何食わぬ顔をしながら朝食を取った。
とはいっても、これから自分たちがやろうとしていることに緊張してしまったのだろう、ショウコの顔が引きつっていて、すこしばかりアキラとアサヒが慌てて、周りが誰も気にしていないと気付いて、盛大に胸をなでおろすという場面があったりと、どこか危なっかしいところもあったのだが、それはまた別の話である。
翌朝、いつものようにベッドを抜け出したアキラとアサヒは、予定の場所でショウコと合流を果たすと、そのまま食堂で何食わぬ顔をしながら朝食を取った。
とはいっても、これから自分たちがやろうとしていることに緊張してしまったのだろう、ショウコの顔が引きつっていて、すこしばかりアキラとアサヒが慌てて、周りが誰も気にしていないと気付いて、盛大に胸をなでおろすという場面があったりと、どこか危なっかしいところもあったのだが、それはまた別の話である。
ともあれ、できるだけいつものように朝食を終えた三人は、何食わぬ顔(といっても三人ともはたから見ていてかなり怪しげな顔だったが)で食堂を出ると、そのままショウコの部屋へと集合した。
なぜショウコの部屋を選んだかといえば、女子の部屋に毎度毎度アキラやアサヒの部屋に集合していたら怪しまれるとか、そういう理由もあるが、一番の理由は、



たまには私の部屋に行こうよ!
二人とも、女子の部屋に入ったことないでしょ?


とショウコが誘ったからである。
これに二人は特に反対する理由も見つけられず、結局ショウコに引きずられるように女子のフロアに足を踏み入れたのだった。



僕たち……ほかの男子に殺されないかな?





あ~……脱出しちまえば大丈夫だろ……


ショウコに内緒でそんなやり取りが交わされたのは、二人だけの秘密だったりする。
それはともかくとして、三人は部屋に入るや否や、すぐさま地図を広げて計画の詳細を話し合っていく。



今回の計画で一番ネックなのは、やっぱりメーティスだな……


黙って頷くアサヒに対して、ショウコは首をかしげる。



……?
なんで?





この船を管理しているのはメーティスだ……
あいつが、俺たちの計画を知っているかどうかは分からないけど、もし厨房の中から脱出をしようとしているのがばれたら……





メーティスは厨房に入れてくれないかもね……





ああ……
だから、何かメーティスに悟られずに中に入れるような、いい言い訳があればいいんだけど……





それなら私にいい考えがあるよ!





いい考え……?





なんだろう……
別にショウコちゃんをバカにするわけじゃないけど……
そこはかとなく嫌な予感がする……





大丈夫大丈夫!
私に任せておいて!
ちゃんと、さっき布石を仕掛けてきたから!


どこか楽しげに自分の胸を叩くショウコに、アキラとアサヒはこれ以上何かを言うのを諦めて、お互いに顔を見合わせながら、肩を竦めた。
それから、弛緩した空気を入れ替えるように、アキラは軽く手を鳴らして話を戻す。



そんじゃ、次は中に入れた後の行動だな……
普通に、そのまま例の通路に行こうとしても、多分メーティスは許してくれない……
警告してくると思う……
だから、できるだけさりげなく、奴にそれと気付かれないように最新の注意を払って通路に行く必要がある





そこで考えたんだけど……
俺たちが一気に通路に向かったら流石にメーティスも気付くだろうから、状況に応じて自然に一人が通路に入り込んでそこで待機……





で、残った二人はその一人を探すフリをして、通路に入り込んで合流
そのまま奥に進んで出口を目指す





単純かもしれないけど、現状考えられる最善の手だと思う……


どうだ? とアキラが確認を取ると、ショウコとアサヒは揃って頷いた。



じゃあ、後は決行のタイミングだけど……
昼飯と夜飯の間……、夕方の四時ごろがちょうどいいと思う……
そのくらいに食堂に乗り込むぞ





了解





OKだよ





よし、それじゃ一度解散して、脱出に必要そうなものを整理しよう……


その言葉を合図に、アキラとアサヒはショウコの部屋から出て、それぞれの思いを胸に決行までの時間を過ごした。
それから身辺整理をしたり、昼食をとったりして時間を過ごしながらしばらくしたころ、ちょうど予め決めていた時間に食堂にやってきた三人は、緊張した顔のまま、互いに顔を見合わせた。



二人とも……
準備はいいな?


こくり、と二人が頷くのを確認してから、ショウコに目を向ける。



じゃあショウコ……
頼む……





うん!
任せて!


力強く胸を叩いたショウコが、ゆっくりとブレスレットに向かって話しかけた。



メーティス……
私たち、ちょっとキッチンに入りたいんだけどいいかな……?


ストレートなその問いに、返答はすぐにあった。



理由によります、ミス・佐江島……


やっぱりそう簡単には入れてくれないか、とアキラとアサヒが唇を噛む中、ショウコは二人に安心させるように微笑みかけてから、メーティスに話しかける。



うん……あのね……
朝ごはんのときにも言ったけど、私も料理を作るのが好きなの……
それで、ここのご飯がとても美味しかったから、キッチンでどんな風に料理してるのか、直接見たいなって思って……





あと、アッキーとアサヒ君は機械が料理するところを見たいって言うから……
だから、中で見学させて欲しいなって思うんだけど……





あれだけ自信満々に言っておいて、考えてた理由がそれ!?





ショウコちゃん……
それは流石に無理があるんじゃ……


まさかの単純な方法に、アキラとアサヒが頬を引き攣らせる。
そして、流石にだめだろうと、二人が諦めかけたときだった。



了解しました
三人の厨房への立ち入りを許可します
そちらからお入りください


直後、食器返却口のすぐそばの壁が音もなくスライドし、厨房への入り口が口をあけた。



あっさり開いた!?





意外とメーティスって単純……?


あまりにもあっさりとした事態の進行に、アキラとアサヒが驚きを隠せないでいる中、ショウコは二人に取って置きの笑みを向けた。



ほら、二人とも!
早く行こ!


そういいながら、口をあけて待つ厨房へと向かうショウコの背中を、二人は慌てて追いかけた。
