ワンボックスカーの助手席、少女が退屈そうに前方のやりとりを見ている。



ヒラヤマの兄貴何やってるんだろ、とっとと、さらっちゃえばいいのに


ワンボックスカーの助手席、少女が退屈そうに前方のやりとりを見ている。



うるさい、オメーは黙ってろ!


運転席の青年がいう。



ああいう家族見てると超マジムカツク!





へっ、お前相当親にやられたな?





うん、ウチの親は最低だったよ、二人とも超ギャクタイ親、でも、うちらはみんなそうじゃない? ユキオは違うの?





俺んとこは実はそうでもない。お袋の事は嫌いじゃなかった





なーんだ、ユキオは可愛がられて育ったんだ?今でもママのおっぱい吸ちゃってるんじゃね?





そんなわきゃねーだろ! ただ嫌いじゃないってだけだ





ったくメンドクセーな。じゃあ、なんでこんな事やってんのさ?





そりゃあ、俺は頭良くないし真面目にやってもろくな人生にならないからに決まってるだろ





それでヤクザになっていい暮らしがしたいわけ? 超ウケるー甘いわ、そんなん





うるせー、黙れ!





ヒラヤマの兄貴ってユキオも言うけど、年変わんないでしょ?





うるさい、アニキは兄貴だ!





尊敬してんだ? ヒラヤマの事





呼び捨てにするなって!





こないだヒラヤマに犯れたんだ……あたし





いつだ?





三日前の夜、マーキーのトイレで、ヒラヤマかなり酒とガンジャで出来上がってて、それで無理やり───





……





酷く殴られて、首絞められて、後ろから───マジ殺されるかと思ったよ。おもいっきし腕に噛み付いてやっと逃げたけど、きっと殺すつもりだった、あたしを。アイツ絶対狂ってるよ


ユキオは黙ったまま窓の外を見ている。
空調の効いた車内、ユキオの額から汗がにじむ。
雨が降りだした。
雨粒がフロントガラスを
ポツリ、ポツリと叩いている。



───ヒラヤマ殺ってよ、ユキオ


