悲痛なまでの絶叫に、落ちていた意識が無理やり引き起こされる。
どうやら、寝ていたようだ。



……ッッ!





ッキャアアアアアアアアアア!!





っ?!


悲痛なまでの絶叫に、落ちていた意識が無理やり引き起こされる。
どうやら、寝ていたようだ。



う、んぅ……





あっ……ああぁっ、あなた……!





ロート、ちゃん……? どうした、っの


ロートが私の顔と、その隣の虚空を交互に見つめている。
正確には、



っひ


血だらけの、青年の死体。



なっ、なな、何っ、何なの、これっ……?!





り、リカさん、あ、あなたが





……っあ、ま、待って! 待って違う! 私じゃ……!


床に尻餅をついたロートが、震える身体で必死に床を這い逃げ出す。
彼女からの誤解と、何かの死体と一緒に残されたあたしは、ふと隣を見て、



……ッ!


凄惨だ。
床一面に広がり、白髪さえも染め上げる紅と、見るからに暴力的な服の裂傷。うつ伏せに転がっている、誰か、だったもの。



ミッシェン……


見紛うことなく、彼のものだ。



『人狼は、夜毎に村人一人を襲撃する』……って言ってた通り、だけど


昨夜、昨日で消えると言っていたのも、このことだった?
であれば、ミッシェンは初日に襲撃されることが分かっていた、というの?



こんな、殺され方……


見る影もなくなるまでめちゃくちゃに引き裂かれているのに、その現場に隣にいるのに。
こうまで無残な殺害現場を背景にしても、気付いて起きる予感は一切しなかった。



う……


怖い。
あたしは隣にいた。
ゲームのルールかは分からないけれど、襲撃は夜毎に一人ずつ。ルールがなければ、ついでであたしも一緒に、こう、だったかもしれない。
それも残念なことに、襲撃は今回だけじゃない。
明日、明後日――と、次は、次こそは自分かもしれない、と怯え続ける日々になる。



どうしたっ、何が起きたんだっ?!





あっ、ハーメルン……





表でロートがわーぎゃー騒いでたけど、一体何が起きた……てっ?!


外に助けを呼びに行ったロートにつられてか、ハーメルンとアリスが部屋に入ってくる。



……っ





うっ……わ





あ、あの……あたしじゃ





とにかく、皆に知らせよう


犠牲者が出た。
本格的な、人狼ゲームの始まりである。



っひ……


全村人が呼びだされて、話し合いを始める。
ロートが、あたしの姿を見て小さく悲鳴を上げたのが目についた。



(参ったな……)


状況証拠からして自分が疑われるのは明白だ。まずはこの疑念を取り払うことから始めないといけない。



もう皆も知っての通り、村にいた人から死亡者が出た





本当に、本当に起きたんですの……?





皆をこの村に集めた、と言っていた張本人であるミッシェンが、無残な姿で発見された


朗々と告げられる事実。現場の隣にいて、否が応でも認めざるを得なかった自分。それと違い、話でしか聞いていなかった村人たちにはざわつきが生まれた。



死体を見るに、彼の言っていた人狼による襲撃、と見るのが適切だろう





マジで……やるっていうのね、人狼ゲーム





えぇ、ということで


ぴょこ、と遅れて出てきた長い金髪の女の子が、覚悟を決めたようにこう言う。



あたしの……出番なのね


共有者による、村の取り決めが始まる。
