橋の上。
赤い手すり、コンクリート地の橋の上を歩く真。
片手に基地でもいだ花の束を握っている。
下を流れる夕日に染まった五百川。
ポケットに入っていた咲の髪の毛を流す。
橋の向こうからやってくるパトカー。
橋の上。
赤い手すり、コンクリート地の橋の上を歩く真。
片手に基地でもいだ花の束を握っている。
下を流れる夕日に染まった五百川。
ポケットに入っていた咲の髪の毛を流す。
橋の向こうからやってくるパトカー。



咲さんには会えましたか?


中から花園が出て来る。
真、一瞬驚きの表情をするがすぐに平静を取り戻す。



お久しぶりです。刑事だったんですね





「意外と驚かないんですね。私はお兄さんが犯人だと知ったとき…なんだろう。涙が出ました」





僕もです。でもスーツの匂いとイメージは合ってます。あなた見かけと真逆で血と汗の匂いが強過ぎるんです。いつから僕を疑ってたんですか?





「クリーニングで返された時にスーツの袖にシミがついていたの。その違和感がやがて松島咲さんの遺留品にあったパーティーのパンフレットと結びついてね」


スーツの袖を見せる花園。
茶色のシミがついている。
パンフレットに映るチョコレートフォンデュと照らし合わせて



「チョコレートねコレ。生地と成分の組み合わせ上、落ちにくいらしくてね。クリーニング後でも残ってしまったみたいね。跳ねるから至る所に」





「だからあのとき…」





「そう、何かの借りにデートでもしようかと思ってたんだけど、まさかこんな形で使うことになるとわね」





愛真、強盗詐欺罪ならびに松嶋咲殺人容疑で逮捕する!


真に手錠をはめる草野。
パトカーの中。
運転する草野。
後部席に座る花園と真。



よくわかりましたね





あそこで逃げるあなたのする事なんて一つだけよ。愛する女の生地を尋ねる。これから裁判する上で重要になってくるのが果たして松嶋咲に対し、あなたに殺意はあったかって事なの





…





銀行強盗、そしておそらく死体遺棄の補助に関しては別として、松嶋咲殺人容疑に関しては…





そんな事、どっちだっていいでしょう?僕はどんな裁きでも受けます





いいわけねーだろうが!!





私はね、現場の状況証拠からあなたは札束に足を滑らせ、弾みで松嶋さんを押し出した、と見てる。つまり事故死と考えてるの。あなたに殺意はなかった。それが公私に渡って私なりにあなたの背中を追ってきた見解





どうしてそう思うんですか?





刑事のカン。もっと言うと…あなたが松嶋咲さんを心から愛していたと信じたいから。あなたは彼女に会ってから確実に変わったわ。本当の意味で美しくいい男になったの。それは愛の証明だと…私は信じています


ハンカチを目に当てる花園。



…花園さん、ちょっと僕のポケット探ってもらえますか?


言われた通りポケットを探る。小沢健二の10cmシングル『さよならなんて云えないよ』のディスクが出てくる。



あらビックリ!





すごい懐かしいですよね。このサイズのシングルCD。彼女の部屋で見つけました。かけてもらってもいいですか?





いいかげんにしろ。お前、何わけのわからない事言ってるんだ





いいの!草野ちゃん


渋々CDをかける草野。
音楽が流れると目を瞑る真。
左へカーブを曲がると
光る海が見えてくる
僕は思う
この瞬間は続くと
いつまでも
南風を待ってる
旅立つ日をずっと待ってる
❝オッケーよ❞
なんて強がりばかりをみんな言いながら
本当は分かってる
二度と戻らない美しい日にいると
そして静かに心は離れてゆくと



この音楽の中でなら彼女と会える気がするんです





僕は彼女を…松嶋咲を心から愛していました。本当に心から…


最終回へ続く
