既視感(デジャブ)
既視感(デジャブ)
あれ?
※既視感(きしかん):実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じる。



わ~いw





わ~いw





るんるん♪





らんらん♪


体が勝手に動いていた。
静が小さかった頃の夜桜の時もこんな感じだった。
まだ舞いを習い始めで、それなのに体が勝手に動き出した。
その時の感じを思い出して踊ると、皆に褒められた。
静の舞いの原点は桜だったのかもしれない。
それなのに、ヤツのせいで桜が嫌いになっていたことがもったいなかった。



オバケ、オバケ、
オバケが出たー!


あの時のトラウマは、生まれ変わっても解消できなかった。
でも、原因がわかったのだ。
きっと、もう、大丈夫……。



♪~





たらら~ん♪





ちらら~ん♪


だって、こんなに綺麗なんだから……。



るんたった♪





っと♪





ぽ~ん♪


クルリとまわってフィニッシュ。



やんや、やんや





ぱちぱち、ぱちぱち





ふぅ……。


小さく息を吐いた。
踊ったからか、心が軽くなっていた。



いよっ!
日本一w





ダンスクラブにでも入ろうかな?
それとも日本舞踊かな?





ぴょっ?


そんなことを思いながら、樹の下に座った。



やっぱ、静香として新しい自分になるのなら、ダンスよね!





踊る~w





ふふふ。
なんか楽しくなってきたわ。





わいわ~いw


逢魔が時とでも言うのか、夕闇に近づく時間、人はいないと思っていた。



らんらららん♪





らん♪


桜の景色を独り占めしたような気分で、手足をバタバタさせていると、



あの……。


と、後ろから男の声がした。



え?!





ぴゃっ!


思わず固まる……。



見られた?
もしかして今の見られてたわけ?


血の気が引いた……。
恥ずかしい……。
まず、そう思った。
きちっと習ったようなものではなく、自分で好き勝手踊ってただけだ。
小学生が踊ってたのではない。
女子高生が踊ってたのだ。
一刻も早くこの場から逃げ出したい……。
それで、この男とは二度と顔を合わせたくない。
でも、ふと思った。



ってか
変質者じゃね?


こんなところで一人で踊ってる女子高生に声をかけるなんて……、
変質者以外の何者でもないわよね?!
そっと周囲を見ると、魔に逢う時間と呼ばれるのに相応しい雰囲気……。
なぜか、他に人の気配がしなかった。



犬の散歩とか、
マラソンする人とかいないわけ?


ぞっとした……。



今、私がここにいることを
誰も知らない……。


桜なんてひとりで観に来ると思われていないから、もし、ここで何かあったら、すぐには気付いてもらえないかもしれない……。



静香先輩、フラれて自棄
起こしてるかもしれません。


そんなことを、あの女は言いそうだ。



今、ヤバい目に会ったら、
探してもらえないかも……。


命の危険を感じた。



きゃー!





みゃ~





みゅ~





みょ~


一目散にその場を後にした……。



あ……。





はぁ、はぁ、はぁ





ここまで来れば……。


ひと気のない川沿いの遊歩道から住宅地まで戻ってきた。
ここには買い物帰りのおばさんとかお年寄りとかが歩いていた。
それを見て、幾分かほっとした。



怖かった。
生きた心地がしなかったわ。


恐怖から体はまだ震えていた。



また桜が苦手になっちゃうわ。
せっかくトラウマの解消になるって思ったのに……。





あれ?


思わず声が出た。
自分の声にびっくりした……。



似てなくね?


初めてヤツにあった時と……。



まさか……、ね。


だって、ヤツは聡士なはず……。
さっきの声は、聡士じゃなかった。
そういえば、優しい感じの声だった……。
既視感?
ずっと昔に聞いたことがあるような……
そんな声だった……。



そんなこと……。


あるはずがない。
そう思った。
でも、ゴミ捨て場にラケットが落ちているのが目に入った。



何、思っているわけ?


※ゴミ捨て場にあるものを拾ってはいけません。一度ゴミ捨て場に置かれたものは市町村の物になります。悪質な場合は窃盗罪に問われることがあります。



聡士が義経の生まれ変わりじゃないなんてこと、あるはずがないわよ……。


気が付くとラケットを拾って、川べりの遊歩道に戻っていた。
※ゴミ捨て場にあるものは、拾ってはいけません。



でも、「そうだ」って
確認もしてない……。





あ……。


