えっと、と俺は青い宝石との会話を思い出す。



……なかなかに複雑でした……あの人たちが、みんな幸せになればいいんですけど





うんうん、そうかそうか!
まあね、魔法が忌み嫌われる世界もあるってことだ!
ちなみに、魔王の物語についても律儀にきいてくれてたね! どうだった?


えっと、と俺は青い宝石との会話を思い出す。



彼女、何十年も前に聞いたことがあったそうです。
内容は忘れてしまったそうでしたけど、人を生き返らせてはいけないという教訓がある物語だといっていました





へえ! それはいい!


セイさんは指をぱちんとならして、俺を指す。



教訓がびしっと残ってるなんて、やっぱり希望が見えてきたよ。
ありがとね、引き続き調査をよろしく!





はい。……調査を続けて、情報を集めれば、セイさんは、えっと……





そうだよ、僕はその物語を直している真っ最中さ!
修理箇所が絞れるから、君の情報収集は本当に助かるのさ、ありがとうね!
他に、気になることは?


えっと、と言いよどんでいると、セイさんはまあいっかと歯を見せて笑う。
もともと訊く気なかったろこの人。



何かあったら、聞けばいいよ!
とりあえず、次の世界の前に、ボーナスステージ!
さっき僕、ボーナストラックっていったけど、それは音楽の場合にしか使わないのかな?
よくわかんないけど、ボーナスステージの方がそれっぽいよね!





はあ……


久々のハイテンションに若干着いていけないでいると、セイさんはきゃらきゃらと笑いながら、頭をとんとんと二回叩いて見せた。



集中しなよ! 君の記憶のことだ





俺の……記憶





そして彼女の


セイさんが、にやりと、意地悪い笑顔を浮かべる。だんだんと、透明になって消えていく。



忘れられない記憶でもある


静かに、目の前の扉が開く。



サンザシ……!


そこから出てきたサンザシは、俺に気がつくことがない。
後ろから出てきた友人らしき人物と、ヒソヒソ声で話している。



それで、添い寝ってどういうこと?


友人に横腹をこづかれたサンザシは、ちがうよと頬を赤らめる。



添い寝じゃないよ!


俺は、少し離れた場所から、ぼんやりとサンザシを眺めていた。敬語を使わない、少し幼くも見えるサンザシ。



またまたあ! 手でも繋いで差し上げた?





だから違うって!
……寝付けないから、側にいてくれって言われただけ。私は、おやすみなさいって声をかけて、それで、隣にいただけ!
弟にいつもしてたのと一緒だよ!


きゃー! と友人は頬を押さえてくるくると回る。



もうそれ、恋人よ! 恋人じゃない!





違うよ! きっと――様はそういう人、たくさんいらっしゃるだろうし


誰かの名前を、サンザシが呼んだ。しかし、その音は、この世界から綺麗に切り取られている。



でも、素敵だった。――様


サンザシが頬を赤らめる。
友人が、もう、と背中をばしばしと叩いた。
ブチ、と何かを引きちぎるような音がして、次の瞬間にはもうサンザシの姿はなくなっていた。
サンザシの隣にいたはずの友人も、きれいさっぱり消えている。



以上、ボーナストラックでした! あ、ボーナスステージでした!


