7って数字が好き。
ラッキーセブン。
幸運の数字。
そして、私の名前──
だから7は好きだった。
そう、この日までは……。
7って数字が好き。
ラッキーセブン。
幸運の数字。
そして、私の名前──
だから7は好きだった。
そう、この日までは……。



7月7日 午後6時





……んっ……アレっ……


微かな眩暈を感じながら、私は目を覚ました。



えっと……確か……


記憶を辿ってみる。
いつもと同じ学校からの帰り
突然、後ろから口元を押さえつけられ、何かを嗅がされた。
そこで、私の記憶は途絶えている。



ここは……どこ?


辺りを見回してもこの場所に見覚えはない。
ずいぶんと広そうで華美な洋間。
天井には豪華なシャンデリアが灯り、さながらパーティでも始まりそうな雰囲気だ。



一体、どうしてこんな所に……


通学路で後ろから襲われた記憶以降がないとなれば、恐らくその人物に連れて来られたと考えるのが妥当だろう。
もう一度よく、周囲を見渡してみた。
すると──
私の場所からちょっと離れた階段の所に、少女が倒れているのが目に入った。
すぐさま、彼女に駆け寄ってみる。



ねっ! しっかりして!





……う……んぅっ……


知らない子だ。
年は同じくらいだろうか、とりあえず気を失っているだけで、ケガもなさそうだ。



……ここは?





良かった、気がついた!


綺麗な子だった。
陶器みたいな白い肌、大きな瞳。
まるで人形みたいだと、私は少し見とれてしまった。



……あなたは…………





あっ!
私も知らない間に
ココに連れて来られたの……


彼女は、何故かとても不思議そうに私を見つめていた。



……? どうかした?





…………いいえ、なんでもない……


そして、押し黙ってしまう。
私はその様子にどうしていいか戸惑ったが、沈黙に耐えきれず自己紹介を始めた。



あの、えっと……
私は、島崎(しまざき) なな
高校2年生……アナタは?





私は…………
白木 雪(しらき ゆき)よ
年は同じ……





白木さんね、どうぞよろしく。
ねぇ、白木さんももしかしてココに連れてこられた記憶って……





ない……
公園を散歩している時に
いきなり後ろから襲われて
気がついたら……





そっか、私と同じだね……





島崎さんは、この場所に見覚えは?





それが全くないんだ……白木さんは?





…………私も、ない





そっか~……
う~ん、これってもしかして誘拐とか?





さぁ、一体どういう事なのかしら





あっ! そうだスマホ!
メールか電話で助けを……あれ?


しかし、制服のポケットには何も入っていない。



私もない……取り上げられたみたいね……





そんな……どうしよう……


私が未だくらくらする頭を押さえて困り果てていると、ふいに後ろから声がした。



あなた達!!
ワタクシを誘拐したのは
あなた達でしょう!?


振り返ると、また知らない女の子が立っていた。



えっと……私は……





私と島崎さんもココに連れて来られたのよ……
これがまだ誘拐なのかどうかは判断出来ない所だけど……





ふ~ん、そうなの。
庶民的な方達だったから、てっきりワタクシを誘拐した犯人かと思ったわ





庶民……、あの~……アナタは?





ワタクシ? ワタクシを知らないの?
全く、新聞やニュースをご覧になってないのかしら?





……城ヶ崎(じょうがさき)あげはさん……





あら、そちらの方はご存知でしたの?
いかにも、ワタクシが城ヶ崎あげはですわ





城ヶ崎……?





日本で5本の指に入る大財閥の令嬢よ
最近は、高校生ながら自ら会社の業務に携わっているとかで
新聞やニュースにも取り上げられてるの


白木さんは、私にそっと耳打ちした。



ふ~……全く誘拐なんて、いまどき古風なやりかたよね~


そんなお嬢様ならともかく、本当に一庶民の私なんて誘拐する意味があるんだろうか?



出口はないのかな?





とりあえず
そこの玄関は鍵がかかってますし
窓もすべて鉄板が貼られていて、出られそうにもなかったですわ





行動的なお嬢様ね……





人生は自ら動いて掴むものよ……
あら?


城ヶ崎さんはふいに、部屋の奥にある柱時計に視線を向けた。



あなた!
そんな所に隠れていないで出てきたら?





ひっ!!


突然声を掛けられた人物は、すぐに体を縮こめてしまう。



ちょっと! アナタがもしかして犯人?





ちっ、違います違います!!


おろおろしながら現れたのは、やはり私たちと同じくらいの年の女の子だった。



あの、その、わっ、私……





いいから出ていらっしゃい!!


おずおずとその少女は時計から離れ、脅えながらゆっくりとこちらに近づいて来た。



す、すいません! あの、わ、私……





犯人には見えないけど……





あなたは?





わ、私は、こ、こ、小森、小森真(こもり まこと)です……





小森さんも、もしかして突然ここに?





あっ、はっ、はい……学校の帰りにバス停でバスを待っていたら突然後ろから口元を押さえつけられて……





そう……





ふ~ん……
ワタクシも同じようなものね、買い物中にお手洗いに行ったら後ろから急に……





一体、誰が……





まだ他にいるのかもしれない……





探してみよう……


私たちは、屋敷の中を探索してみることにした。
まずは、1階の部屋をみてみる事にした。
広い洋館には玄関の他に幾つかの扉があるが、やはりどの部屋にも鍵がかかっている。
窓は城ヶ崎さんが言っていた通り鉄板が貼られ、外の様子がわからない。



二階はまだ確認してませんの……


私たちは、二階へ行く為に中央の赤い絨毯の敷かれた階段を昇った。



広いおうちだね……


二階にも扉は複数ある。



手分けして探しましょう


私は、一番奥にある扉のノブを動かした。



開かないか……





あっ、あの!!
この部屋扉がひ、開くみたいです!!


みんなが小森さんの扉の前に集まり
せーので扉を開いた……
中には──
倒れている二人の少女がいた。



だ、大丈夫!?


私たちは、すぐに彼女たちに駆けよった。



うっ……うん……?





こ、ここは……?


二人は同じ学校の制服を着ていた。



私たちみんな突然意識を失って、ここに連れてこられちゃったみたいなんだけど……





あなた達同じ学校の制服ね
お知り合いなのかしら?





えっ? ああ……。
ええ、彼女は私の幼なじみよ





図書館からの帰り、突然後ろから何か薬品をかがされて……





私もよ、部活の帰りに後ろから突然……





やっぱり……





あっ、私は島崎なな
こちらは白木雪さん……





わたくしは城ヶ崎あげは
まぁ、知っているとは思いますけど





あっ、あっ、こ、こ、小森真です





私は佐川(さがわ)ふうり
彼女は室井柚(むろい ゆず)……





…………よ、よろしく


その時──
突然、どこからか懐かしい音楽が聞こえて来た。



夕焼けこやけで日が暮れて~……
山のお寺のかねが鳴る~♪





なに?





どこから聞こえて……





ピンポンパンポ~ン♪
みなさ~ん、そろいましたか~?
それでは~ゲームをはじめましょぉ~っ!!
1階玄関広間にお集まりください


一体、なにがはじまるというのだろう……。
嫌な胸騒ぎがしていた。
