


くっくっくっ……
ついに……ついに成功したぞ……





我が叡智の結晶!
異界より魔の者を召喚する術式!!
ついに完成したぞ!!!





ははは! さすがは私!
高潔なる魔王の血筋、
それに相応しい成果ではないか!!





…………





くくく……
如何な異界の存在と言えど、
我が威容の前では言葉を無くすか。





まずは名乗れ。黒き獣よ。
この私の眼前で口を開くことを許そ――





ふおおお! チョー綺麗な姉さんだ!!





っ!?





いやあ、目の前が真っ白になったときは
どうなることかと思ったが……
悪くない状況だな!





……ふむ。
どうやら言語が通じていないようだな。
やはりまだ改良の余地があるか……





おっと、そうそう! 名乗らないとな!
オレはクロ!
人呼んで『長尾のクロ』さ!
長ぁい尻尾が自慢さ! よろしくな!!





お、おう。ナガオノ=クロだな。
覚えたぞ。





言語は通じていたか。しかし……
私が想像してたのと違うな。
こやつは、なんというか……





いや。見てくれで判断は出来ん。
こやつは異界の者。
未知より来たりし者なのだ。
きっと見かけによらず、
なんかすごいチカラを持っているのだ。





さて、次は姉さんの番だぜ!
名乗られたら名乗り返す!
それが常識だ!





ほう……私に名を聞くか。
いいだろう。その蛮勇に免じて許そう。





聞き惚れよ!
しかして讃え、更に喜べ!
我こそは魔王が血族! 次代の魔帝!!
ヴァンダ・コンセプシオン・シュリック・アファナーシエヴナ・ヘードバリ……





最初のとこ、どっかで聞いたような……
っていうか! すっげえ長いな!!
い、いつまで続くんだ!?





――マデレイネ・カッセル・ラスコン・ナサリオである!!!





じゃ、ヴァンダ姉さんで!





…………そうか。まあ、構わんが。





我が渾身の名乗り口上だというに……
身動ぎひとつせぬとはな。
さすがは異界の者といったところか。
並の存在であれば、
我が重圧に耐えきれず気絶していよう。





名前がチョー長すぎて、
最初しか思い出せなかったぜ……





ま、間違えてなかったみたいだし、
特に問題はないな!





さて。ナガオノ=クロよ。





クロでいいぜ!





ふむ。では、クロよ。
早速だが、貴様に仕事を与える。





うげ。仕事か……
できればネズミ取り以外で頼む!





ネズミ……?





……まあよい。
異界のことを聞く愉しみは後だ。





貴様は我が魔界の住民第一号である!
平たく言えば私の従者だ!
栄誉ある役目、ありがたく拝命せよ!





つまり、オレはただ
姉さんの近くにいればいいのか?





うむ。そういうことだ。





お安い御用だ!
この『長尾のクロ』、いつ何時でも
姉さんに付き従わせてもらうぜ!





悪くない返事だな。忠勤に励むがいい!





ふふふ……
ようやく私もここまできたか。
いよいよ我が覇道が始まるのだ!
今に兄上も父上も抜き去ってみせよう!





……なんか勢いで返事しちまったけど。
ここ、どこなんだ?
ひょっとしてあれか?
まさかオレ、ユーカイされた系……?


