カラン…
カラン…



前回までのあらすじ…





いきなり何だにゃ、帽子屋?





こっちの話さ





無事、マッチ売りの少女を見つけたアニス。でもなぁ、なかなかに少女は曲者だった。
いや、俺からすれば可愛いけどねぇ





???





自分の置かれた状況を正直に話すアニス。マッチ売りの少女の持つ『願いがかなうマッチ』を無事手に入れることが出来るのか…





酔ってるのかにゃ?





まだ見ぬ美女に酔いたいねぇ





チェシャがいるにゃ!





お前さんが女だったらねぇ……





にゃにゃにゃ~?





あなたは異世界の方だったのですね。異世界結婚なんて、新しいですわね!





そのマッチを何とかして譲ってもらえないだろうか?大切なものだと言われると、難しいのかもしれないけれど…





元の世界に戻るのですか?
ここでマチとともに暮らしましょう!





綺麗なお姉ちゃんもついてくるわよ!





なぜ出会ったばかりの兄にそんなに押してくるのだ?男なんて沢山いるのではないのか?





皆、逃げちゃうんですー。
かなしぃですー!





こんなかわいい子なのにね!





ああ、夫婦…。夫…。
あこがれますわぁ





なぜ、マチはそんなに夫婦に憧れるのだ?





愛と!





お金の!





象徴だからです!





…そう?
結婚したってお金が入ると決まった訳では…





夫をこき使って稼がせるのですわ!
馬車馬のように!





そーよそーよ!





で、マチとお姉様で裕福に暮らすのですー。夫は妻を愛することも怠らずにするのですー。仕事も、家事も、マチの事も大切にするのですー!





私が窓掃除をチェックしていびってあげる☆





あ、これは男は逃げるわ……





夫って言葉、素敵ですよねぇ…うっとり





そ、そうかなー





夫という字をひっくり返したら¥になるんですよ!倒れるまで働かせればお金になる!
素敵!





そんなマメ知識いらなかった!





もしも夫になってくださるなら、マッチは差し上げますわよ?





う…でもそれで異世界に帰ってしまったら、結婚の意味もないだろう





あや~。難しいところですねぇ…





都合のいい女になっちゃダメよ、マチ!





むむむ…。
そうだ、マチも異世界に来てみるか?





そんなこと、出来るのですか!?





それはわからないが…。だがもし、異世界で男漁り…もとい男性探しが出来たら、マチの夢がかなうかもしれない。
それに兄の国はそこそこには裕福だ





あ、逃げる気ですかぁ!ひどいですぅ!
家宝が目当てなんですねぇー!





マチは金を稼いで家事をするだけの人間目当てな純粋な子なのに、ひどい!





さいてー!さいてー!





はぁ…兄はどうすればいいのだ…。
弟よ……


その頃、裏通りでは…



裏通り…それらしい人はいないなぁ





アリス…(こそっ)





順番だからね…(こそっ)





ねえ、アリス。
マッチ売りの少女は…あれ?





アリスはちょっとお店の中見てくるってさ





それなら一緒に





いいって。一人でいけるってさ





え、そうなの?





…





…





あの、さ…オトートス…





シロウ?





はじめて二人っきり…だね





そうだね。
でも大丈夫、すぐ傍に皆いるさ





そういうのじゃないよ、バカ





ん?





…バカ





……兄さんほどじゃあないさ





ねえ、オトートスは、僕のこと嫌い?





? 嫌いじゃないよ





じゃあ…好き?





友達が増えて、嬉しく思っているよ





……そっか。友達か





ねえ、オトートスとアニスさ。
ずっと、ここにいなよ





え?





この世界に、いなよ





…それは





ボクが居て欲しいって、言っているの





…シロウ





キミだけなんだ





僕だけ?





嘘で試すような事、絶対にしたくないって思ったのは、キミだけ……





僕は嘘つきだ。皆詐欺師って僕の事を呼んでいるのも知っている





嘘で、自分を守ってきたこともある。
いつも、軽口をたたいていれば、楽しいし気楽だった





…





でも、キミに嘘をつきたくない。理由はわかんないけど、キミには嘘なんてつきたくない





シロウ…





イケナイこと、かな?
こんなの、おかしい?





…可笑しくなんか、ない





…じゃあ、今だけ





…うん





見知らぬ世界の、雪が降りしきる街の冷たい空気の中で、シロウの吐息と体温がとても温かく感じられた。
折れそうなほどに華奢な肩が微かに震えるたびに、綺麗な銀髪が僕のほほをかすめる。
早摘みしたリンゴのような、甘く切ない香りは、シロウの気持ちを代弁するように、優しく僕の鼻腔をくすぐった――





ちぇ、シロウの奴。
キャラじゃない事してるなぁ





…オトートス、やっぱり、帰っちゃいやだよ。君とアニスが帰ったら、また僕は退屈な日々に逆戻りさ





それは、とってもつまんないよ。
……寂しいよ





おお、アリス





うわぁ!? あ、アニス!





ここにいたのか、探したぞ





い…今の無し!きかなかったことにして!
っていうか、しろ!





へ?今の?





なんだ、聞いてなかったのか…ほっ





可愛らしいお友達ですのね、あなた





…あなた?





この子がマッチ売りの少女、マチだ





そしてアニスの妻である、マチですわ





アニス?どういうこと?





かくかくしかじか





把握





でもさ、そんなに旦那様が欲しいなら、その願いがかなうマッチで旦那様を手に入れたりはしないの?





そういえば!





願いがかなうマッチは、そのマッチの炎が燃えている間しか効力がありませんの





恋愛系には不向きな家宝よねー





写真がしゃべってる…





え、さっきワンダーランドなら普通って言われたんだけど?





普通なわけないよ!





あ、バレた





騙してたのか!





…はぁ、とにかく弟と合流を…





あ~、あの、それはもうちょっと…





へっ?





ぎゅ~~





あ、あの、シロウ…
そろそろ皆と合流を……





えへへ、しあわせ~


次回予告!



あなた、王城で待ってますわ!


なんとかマチの説得に成功した一行は、次なる目的地を目指し再び冒険へ…!



あら、マチ。王城にいきますの?





じゃあ、私も行くわ!





よろしくね!





出れるんかい!?


