城門前の中庭。
ニケは空を見上げながら、大きく伸びをした。
この城に来たばかりの頃より、
1回りも2回りも大きくなった。
それは、中身も同じことだ。
勇者が、旅立ちの朝を迎えた。



いやー、いい天気だなぁ。


城門前の中庭。
ニケは空を見上げながら、大きく伸びをした。
この城に来たばかりの頃より、
1回りも2回りも大きくなった。
それは、中身も同じことだ。
勇者が、旅立ちの朝を迎えた。



そうだな……。


ニケの隣にはオーゼが立っていたが、
明るい表情のニケとは対照的に、沈んだ顔をしている。



私が代わってやれたらと今でも思う。
ニケ、本当に……。





……。





いや、やめよう。
思えば君には、
このことで怒られてばかりだったな。





ハハ、いよいよ出発って日に、やっとわかってくれましたか。





でも、少し間違えてますねぇ……。





そうですよ。





"君たち"でしょう?
私だって何度も言いましたよ。





そうだったな。
すまない。
君にも怒られてばかりだな。





おっすおはよう。
3人とも早いね。





おはよう。オーゼさん。2人とも。





おはよう。





おはようございます!





ルーツさん、アステリアさん、ファイナさん。
おはようございます。





いよいよ出発の日だね。
ちゃんと準備はできてるか?





バッチリですよ。





そうか。
準備が済んだ後で悪いんだが、
俺たちからの贈り物だ。


そう言ってルーツが取り出したのは、2本の剣だった。
騎士団の紋章があしらわれたそれは、
ルーツやアステリアの剣と同じものだ。



え、これ、いいんですか?





この剣を持つことが許されてるのって、
騎士団の上位実力者だけなんじゃ……。





まぁ、特別だ。
それに、この剣を持つに相応しいだけの力はもう持ってるだろ?





私にはまだまだ及ばないけどね。





当たり前だろ。
簡単に追いぬかれてたまるかってんだよ。





私は追いぬかれちゃったわ。
悔しいわね。





ファイナさんは肉弾戦向きじゃないでしょう。





そういうわけだ。
持って行きな。





ありがとうございます!





ありがとうございます。





まぁ、2人は色々押し付けちゃうんだから、
これぐらいはしないとねぇ。





あっ……。





……本当にすまない……。





また……。





相変わらずだなぁ。
最後までこれかよ。





さっきはちょっと直ってたんですけどね。


ニケの言葉で笑い合った後、
皆静まり返ってしまった。



……それじゃ、そろそろ行こうか?





はい。





気をつけて行くんだよ!
困ったことがあれば戻ってこい。
私達が助けてやるよ。





フフ。
その時はお願いしますね。





俺が教えられることは全部教えた。
後はお前ら次第だよ。
お前らが帰ってきた時、どれだけ成長してるか楽しみだぜ。





いいんですか、そんな悠長に構えて。
帰ってきたら今度こそ勝ちますから。





言うじゃねぇか。
楽しみにしてるよ。





頑張ってね。
辛くなったら何時でも戻ってきていいから。





ありがとうございます。
でも、私たちは大丈夫ですよ。





頼もしいわね。





頼むぞ。2人とも。
私達の方でも、出来る限りの事はする。
近くに来ることがあったら、
また顔を見せてくれ。





皆さんもお元気で。





行ってきます!


2人の乗った馬が、城門から飛び出す。
この日、2人の勇者が旅立って行った。
2人の旅の行く末がどうなるのか。
それはまた別のお話。
駆けて行く勇者の髪飾りに朝日が反射し、光り輝いた。
終わり
