狼の助言を受け、無事に森を抜けた勇者たち一行は一つの村に到着した。
狼の助言を受け、無事に森を抜けた勇者たち一行は一つの村に到着した。



なんというか、ずいぶん荒れてるな。





私がこの村が見えていた時はこんなになっていなかったんですが。





これじゃあ宿とかに泊まるのは無理そうだね。





今までもずっと野宿だっただろ。かろうじて屋根がある家もあるから、そこを使わせてもらおう。





メシだ!飯がなきゃ寝れねえ!


今夜の宿も決まり、食材探しに散り散りに分かれていった。



しかし、いったい何があったんでしょう。


食材探しを真剣にしていない姫は、ぶつぶつと独り言を呟きながら廃墟となった家々を見回している。



真面目にやってます!


私はなにも知らない。



……魔物。





え?


ふと見ると、廃墟の付近で瓦礫を調べている騎士がいた。



魔物とはどういう意味ですか?





……魔物が村を襲った。





この村を!?


少し考えればたどり着きそうな答えに大げさに驚く姫。



ほんとに知らなかったんですよ!


私もなにも知らない。



それじゃあ、生存者の捜索とかはしなくていいんですか?





……難しい。





難しい?





ここまでひどいと見つけられても救助が難しい。人手も治療のための道具も少ない。


話を聞いていたらしき勇者が現れて追加で説明をした。



なるほど。





……残党処理が優先。





まだこの村に魔物がいるんですか?





……可能性は高い。





よし、じゃあ飯と一緒に魔物も探すか。





そんなものついでにしないでください!





……了解。


勇者の命を受け、騎士は食材と魔物の捜索を始めた。



あ、待ってください。私も行きます。





……。





……。





気まずいです…。





あ、あの騎士様はどうして勇者様と旅を?





……。





ご、ごめんなさい、あまり聞かないほうがいい話題でしたか。





……平和。





え?





……勇者が俺が世界を平和にすると言った。





……だから私も平和のために剣をとった。





勇者様らしいですね。





……。





……!


騎士は何かの気配を察し、剣を手に取る。
 
すると遠くから足音と叫び声が聞こえてきた。



おらー!待てー!





剣闘士様の声!





……。


 
足音は次第に大きくなり、その主が騎士と姫の前に姿を現した。
 
 



ぎゃあああああああああああああ!!!!!





おお、姫に騎士。





見てくれ!でっけえ走るキノコを見つけたんだ!こいつは食べ応えがあるぞ!





どう見ても魔物じゃないですか!そんなもの食べようとしないでください!





……魔物は倒す。





おっしゃー騎士!一発で決めるぞ!


 
 
騎士の素早い斬撃、剣闘士の強力な斬撃が当たり、魔物は切り刻まれた。



す、すごい…。





おしゃー!勝ったー!





……。


子供のような姫の感想を背に、二人は剣を収めた。



おいおい、なんかすごい音が聞こえたんだが。





うわっ、気持ち悪い魔物。


戦闘の音を聞いて勇者と魔法使いも集まった。



勇者に魔法使いも!夕飯確保したぜ!





残念だが魔物は食べられない。魔力を有しているから人間が食べるとまずいんだ。





まずくても食えりゃいい!





いや、味のまずいじゃなくて…





魔力を人間が摂取すると体が動かなくなるとか、魔物になるとかいろいろ言われているんだよ。





まだ確かなことはわかってないけど、いいことが起こらないことは間違いないと思うよ。





なんだよー。頑張り損かよー。





それに死んだ魔物は、時間がたてば魔力が霧散して消えるからな。仮に食えてもたぶん腹に入った気もしないだろ。





……。





どうした姫?





いえ…初めて皆さんが勇者たちらしいなと思っただけです。





何言ってんだよ、初めからそうだろ。





そうですね。


今まであまり目立たなかった二人の戦闘を目の前にし、嫉妬のあまり苦し紛れの反抗心を出そうとする姫である。



そんなつもりじゃありません!





とりあえず、あっちでキノコをいくつかとってきたから焼いて食うか。





え、キノコ?





嫌いか?





いえ、普通さっきのを見た後に勧んで食べたいものではないかと…。





わたしは大歓迎だ!





……私も。





仕方ないから食べるよ…。





姫の分はわたしが食べてやるからな!





私も食べます!


かくして、初めての魔物との戦闘も無事勝利し、姫の役立たずさにも磨きがかかりながら、勇者たち一行の旅は続くのであった。
