期待と心配半々くらいでアベルくんの反応を見守る。



おはようアベルくん!





あ、おはようございますアカネさん!





よければ途中まで一緒に登校しない?


期待と心配半々くらいでアベルくんの反応を見守る。



はいっ! もちろん!





よし、登校イベントクリア! 初期成功確率30パーセントによく勝ったよ茜!





そしてスキップ!





会話強制終了!?


所変わって授業終了後の帰り道。



あ、アベルくん!





アカネさん! アカネさんも今から帰るところですか?





そうだよ。一緒に帰ろう?





はい! よろしく!





下校イベントクリア(略)





いいからスキップ





容赦ない!


なんでこんなにアベルくんに話しかけているのかというと。話は前回の昼休みにさかのぼる。



庭園ってここかぁ。きれいな所だねー





サンドイッチとか持ってきて食べたりもできる絶好のデートスポットだよん





………………





………………


じっと時が過ぎ去るのを見守る。
一陣の風が吹いた。



ここに来れば図書館に来た時みたいに勝手にイベントが起こるんだと思ってたけど





いやそのはずだぞ?





何も起きないんだけど





えーおかしいなー。時間も場所もあってるのに





……あっ





なに?





お助けアースラ姉さんは言ってないけど、イベントの発生条件に一定以上の好感度ってのがあるんだった。つまりは好感度不足





好感度不足!?





いやー当たり前っちゃ当たり前かー。まだ出会いイベント起こしただけで他なーんにもアプローチしてないもんなー。足りる訳ないなー!





お兄……





し、初歩的すぎて忘れてたの!
最近の乙女ゲームってノベル式ばっかりで勘が鈍っちゃっただけだっての!


慌てだしたお兄の逆切れみたいな言い訳。



さ、さー気を取り直してまずはー





とにかく学校の中探してアベルくんと会う回数を増やしたらいいんでしょ。ストーカープレイだっけ





そうです……でも一途プレイって言ってください……


というわけだった。



あ、アカネさんまた会いましたね。今日はなんだかよく会うなあ





あ、あはは……





よし、一日三回遭遇の固定台詞キター


良心の呵責に耐えながら必死で笑顔を作る。今日の夕食は豚肉のピカタかー。美味しい(ような気がする)なー。



あれ、茜スキップしないのか?





なんか精神的に疲れたからゆっくりしたい……





んじゃー休憩がてらアベルと会話してみるか


そうしよっと。となりでスープをすくっているアベルの方を見る。



ねえ、アベルくんて私より年下に見えるけどいくつ?





12歳です!





やっぱりそのくらいかー





特待枠で入れさせてもらってるので……





へえ! じゃあアベルくんってすごいんだね!





えへへ……





そうだ、魔導書科って何の勉強するの?





そうですね……。今は魔導書の複写ばかりですが、腕が上がれば魔術を込めた魔導書の作成もできるそうです





魔術を込める……?





読むと魔法が発動するような魔導書を作ったりするんです





わー! 面白そうだねそれ! 絵本に仕掛けを入れて開いた瞬間ふわーっとかできるの?





そうですそうです。すごい人になると読むだけで魔術が習得できる魔導書なんかも作っちゃうんです





へー! そんなのがあったら勉強しなくて済むのに……





読む方にも条件が付けられるそうですけどね。知識とか魔力とか





そんなぁ!





あははははは





うーん、でもアベルくんて几帳面そうだし魔導書を書くの、似合ってると思うよ





……いつか力の籠った魔導書を書くのが夢なので嬉しいです……


そんな感じで喋っているとスキップしなくても時間はあっという間に過ぎていく。気づけば食堂にいる生徒たちの数も少なくなっていて、それじゃあとアベルくんと一緒に席を立った。



今日はアカネさんとおしゃべりできてすごく楽しかったです。名残惜しいけれどここで。おやすみなさい、またあした!





うん、またねー


男子寮の方へ向かうアベルくんを見送りつつ、女子寮に帰ることにした。



そういえばお兄、全然茶々入れてこなかったね





いや、なんかもう……





どしたの?


いつになくお兄の言葉の歯切れが悪い。



え、さっきの会話なんかまずかったの?





いや、その逆。お前無意識なんだろうけど、アベルの会話全部クリティカル出してたんだわ





クリティカルってなにそれ、バトルみたい





バトルみたいなもんだ。このゲームにおいて通常会話ってのは話の流れが決まってて、それを外れた台詞を言うと終了するもんなんだわ





具体的に言うと?





んー。さっきならアベルと喋ってて魔導書科の話になったろ? 魔導書科の話が出たら今度はどんな魔導書があるのか、が話題に出ないと話がストップされてたんだ





ああ、よく覚えてないけど大体そんな話したね





お前は今回この話題を最後まで完走しちゃったの。初っ端から





うん。なんかよく分からないけどやったー





なんだろな。この流れって予測できるもんじゃないし、ここのシナリオライターと相性がいいのかもなお前





んじゃ、ちゃっちゃと会話確認してアベルのシロクロ確認してみますかー





……ん。
そろそろ好感度もたまったしもう一度行ってみるか、庭園に


