こうして、
勇者の冒険は始まった__



セルズ、お前にはこれから魔王の暴走を止めてくれたまえ!!





分かりました!!!





さあ行くのじゃ!
お主の行く先には冒険が待っておるぞい!





はい!


こうして、
勇者の冒険は始まった__



・・・とはいってもなあ・・・
お供も武器もお金も無いんだな・・・


僕はセルズ。この街の一人の住民だ。
とはいっても、勇者とかいきなり城に連れられてきた挙句勝手に勇者に仕立て上げられ、すっかり街はてんわやんわでお祭りごとになっている。
しかし、考えてみてほしい。
僕はただの一般人であり、たまたまお城の門の前を通ったら兵隊に連れ去られ、挙句勇者にされたのだ。
しかも理由は前の勇者に似ているかららしい。



この服も王様がくれたけど、
僕は何も剣とか魔法とか使えないしなあ・・・


本当に、僕は一般人であり、
魔法や剣使いもできなく、
前の勇者みたいには魔王を倒すことが出来ない。
倒せるとしたら別の人だ。



あ、あの~





・・・?なんでしょうか。





も、もしかして勇者様ですか・・・?





あ、はい。
・・・といっても武器とかは持っていないですが。





あぁ・・・よかったです!!
私、魔王なんですけど・・・、よかったら一緒に旅をさせてもらえませんか?





あ、いいですよ~
って・・・





ま、まままま・・・


魔王~!?!?!?
そんな、いきなり現れて、しかも僕に話しかけてしまっていいのだろうか。
そんなの昔話だったら即効に叩きぎられているだろう。



ふう・・・お父様は話していらっしゃらないのですね・・・
分かりました、説明します。


そういうと、彼女は本当のことを話してくれた。
正確に言えば、彼女は魔王の娘であり王様の娘でもあるらしい。
そして、昔は本当に魔族と人間で対立していたらしいが、王様と魔王がお互い一目ぼれ、後に終戦を向かえ、今にいたるという。
今回の王様の依頼は、決して魔王討伐ではなく、魔王(の娘)のわがままに付き合ってほしい、とのことだった。



ご、ご理解いただけたでしょうか・・・
お父様がご迷惑をおかけしました・・・





あ、ああ・・・
もう大丈夫だよ。
服しか与えてもらわなかった理由も分かったし。





あ、ありがとうございます!!





それで、僕はなにをすればいいのかな?





え、えっと・・・
そ、それでは、一緒に商店でお買い物をしてみたいです・・・!





おう!分かった!
それじゃあいこっか!





は、はい・・・!


そうして、僕らはこの祭りの中、彼女と商店めぐりをしたり、劇場へいってみたり、とにかく今までにないくらいこの街を探索し、楽しんだ。
こうして思えば、知ってる街でもこのように歩き回ることはダンジョンと同じようなものだろうか。
まあ、ダンジョンには危険がつき物だが。



今日はありがとうございました!
あんなにわくわくしたのは久しぶりでした!


彼女の目はとてもきらきらと輝いていた。
きっとよっぽど、城下街がとても輝かしいものに見えたのだろう。



いやいや、こちらこそ。
なんだかんだ、僕も楽しかったよ。





うふふ、お互い様ですね!
・・・また、よかったら遊びませんか?
今度は隣町まで!





え、でも王様にさすがに止められそうな気がするけど・・・





大丈夫です!
いざというときはこっそりぬけだしちゃいます!





あ、あはは・・・
さすがわがまま娘さんですね・・・





でも、なんだか冒険してるみたいですね。
危険を冒しても行く・・・
まさに勇者、ですね!





うーん、そうじゃないと思うけど・・・
まあ、そういうことにしておこっか!





はい!!


こうして、わがままな魔王と一緒に旅をしながら、勇者は冒険をするのであった。
これからも
若者の冒険は続く!
