■十月十六日
船は午後二時半に曳索をときはなちロシレッタ湾を離れると、海上を満帆で一時間九ノットくらいのゆっくりとした速度で航行していった。
乗客は船長の妻子に、私とその弟子ゴアリングを加えた四人である。
今回の、この療養を兼ねた長期航海に際し便乗の便宜を図ってくれたブリッグズ船長には感謝してもしきれない。長年の魔術研究によって疲弊した私の精神は、この航海によって必ずや快癒へ向かうことだろう。



とりあえず格子外さないとな





念のため格子をじっと見てみる





普通の格子ですよ(笑)。





……よかった





はい、では格子を外して昇降口を下りますね。あ、取り外した格子の蓋はどうします? 昇降口に戻しときます?





意味深な質問だなオイ。





他の場所にどかしておいた方が良さそうな気がするが。





戻さないでその辺に置いておきます。





ほほう、では格子はどかしたままにしておきますね。





一体、何があるんだろう……





砲列甲板には数列の大砲とハンモックが置かれており、数名の船員が生活していたと思わしき跡が残っています。
砲列甲板の前部には大食堂へと続く通路が、後部には客室への扉があります。
甲板の中央にはこれまた船倉へと下る昇降口がありますが、格子の蓋はついておらず、また、船倉は床下から3メートルほどに渡って浸水していることが分かります。





じゃあ、この部屋の探索、するね





GO!





水に落ちないように……
2d6 = [4,4] = 8





ふむ。それでは、ナロードさんは船員のハンモック近くに置かれた衣装箱の底に、
血に濡れた――ように一瞬見える赤錆まみれの刀剣を発見します。
武器としては使えませんが、400ガメル相当の価値がありますね。





びっくりした……。でも、格好いい……持っておきたいな





それ、そのまま持って行って大丈夫なのか?





危ないから布で巻いておいた方がいいよー?





じゃ、じゃあ布で、巻きます……





さて次はどうします?





船倉はどんな感じだ?





昇降口からちらりと覗いてみたところ、
船倉は先ほども言ったとおり3メートルほど浸水してますね。
見える範囲に損傷は見つけられないので、ここから確認できない船底あたりからの漏水のようです。





それなら探索はちょっと無理そうだねー





一応、ぼくは水のなかでも、行動できるけど……





はい、エルフの種族特徴ですね。
[剣の加護/優しき水]の効果で、
ナロードさんは一時間なら水中でも息継ぎなしで行動や発声が行えますよ。





いや、安全が確認できるまでは水中の探索を行わないほうがいい。
何かあって水中のナロードに危害が及んだとき、俺たちは手出しができないからな





うん、分かった……(実はウィルに心配してもらってちょっと嬉しい)





じゃあ、おとなしく行ける場所から調べてく?





そうだな。まずは大食堂から行くか





では大食堂ですね。





大食堂には幾何学的で精密な柄の絨毯が敷かれ、オーク材やマホガニー材の腰羽目と長椅子をそなえた気品漂う部屋となっています。
部屋の奥には調理部屋が隣接し、そこには数個の木箱と樽が積み上がっています。
また、調理部屋の隅には下に向けて梯子の伸びた、小さな昇降口が併設されています。





昇降口はどこに繋がってるの?





上から覗いてみた限りでは物置部屋のようですね。
調理部屋に積み上がっているものと同じ木箱や樽が、何個も並んでいるのが見えます。床は浸水しているようですが、高さは20センチにも満たないほどです。





とりあえずこの部屋から調べよう。
木箱を調べてみたいが。





どうぞ、行為判定してみて下さい。





航海中の食料とかだろうか
2d6 = [5,3] = 8





ではウィルさんは木箱に詰まった塩肉やビスケットなどの保存食のなかから、まだ辛うじて食べられそうなものを4個見つけます。





本当に食べても大丈夫かなあ……?





ふうん、食べてみるか?(ワーグナーに向けながら)





この仕事が終わってからな!





食べはするんだ……





続いて樽も調べてみます!





どうぞ!





じゃあこっちはお酒かな?
2d6 = [2,6] = 8





樽自体は厳重に密閉されており、側面にはラベルが貼られています。
それによると中身はどれも全て工業用アルコールのようです。





うぇ、この臭い苦手……





そういや、積荷に少量の工業用アルコールがあると船荷証券に書いてあったな





それじゃ、探索もしちゃうね……
2d6 = [5,4] = 9





ではナロードさんは食堂にあるテーブルの下に、一冊の手帳が落ちているのを発見します。
手帳の最後のページには小さな文字で『ジョセフ・ハバクク』というサインが入っています。





宝箱の持ち主か!





これは重要そう!





手帳の中身は読めるのか?





はい。
手帳は流麗な交易共通語で書かれているので、判定なく読むことができますよ。
内容はこちらの通りです(と言いつつ以下の文章を順番にプレイヤーたちに見せていく)。


■十月十六日
船は午後二時半に曳索をときはなちロシレッタ湾を離れると、海上を満帆で一時間九ノットくらいのゆっくりとした速度で航行していった。
乗客は船長の妻子に、私とその弟子ゴアリングを加えた四人である。
今回の、この療養を兼ねた長期航海に際し便乗の便宜を図ってくれたブリッグズ船長には感謝してもしきれない。長年の魔術研究によって疲弊した私の精神は、この航海によって必ずや快癒へ向かうことだろう。



宝箱の持ち主、魔術師だったんだ……





ゴアリングの名も出てきたな。魔術師の弟子か





なんだか色々ときな臭くなってきたなー





宝箱の中身はなんなんだろ?
積荷になんか今回の原因があったり?





手帳の記述はまだ続きますよ。


■十月十七日
天候は申し分ない好天で、絶えず西南西から微風が吹いている。新鮮な空気を吸えたおかげで私の精神も安定の兆しを見せている。ブリッグズ船長は明確な教養のある聡明な男で、夜は彼の部屋でともにパイプ煙草を喫みながら羅針盤の偏差や海流観測についていくつかの話題を論じあった。
■十月十八日
空気が昨日よりも冷たいので、毛糸の外套を出して着た。正午の観測によると我々はこれまで三百七十マイルを走行したことになる。
夕刻鯨が見えたので、船内が少々ざわついた。
■十月二十日及び二十一日
霧雨が続いているので室外はまだ寒く、キャビンでゴアリングと互いの魔術論を闘わせた。
この男はシャドウにして魔術師を志す異端児で、まだ年若いが老猾な物事の考え方をする。
あまり気の良い青年ではないが、魔術の才にかけてはそこいらの魔術師をも凌ぐものがあるのだから、これを開花させることを我が生涯における責務と考える。
■十月二十二日
どこか近いところで荒天があったらしく、海上に大きなうねりがある。空は雲一片もない好晴、南西からのさわやかな軟風が船を心地好く進めている。
午後十一時、一大事が突発。ブリッグズ夫人とその娘がいなくなったのである。ブリッグズ船長が真っ青な顔をして私のキャビンをへと飛び込んできて、妻を見かけなかったかという。
その後、一時間半ばかり船内をくまなく探したがどこにも影すらなかった。
船長には気の毒だが、不注意で海に落ちたものと考える他ない。
声には出さねど、そのことは船長も分かっていることだろう。二人の失踪は悲しむべきことで、この航海の前途を憂鬱なものに変えてしまった。
■十月二十三日
今朝がた甲板に出てみると気の毒に、船長がしょんぼり佇んで船尾の大海原を見つめていた。
水夫の、ビルジに貯まっている水が予想より多く、航海に支障をきたしかねないという報告も項垂れたままに聞いていた。
この船は現在一時間八ノットで走航している。今では事実上の指揮をとっているのは一等航海士のリチャードである。



うう、船長かわいそう





このあたりの記述が失踪の手掛かりになるか





ゴアリングが、怪しそう……


■十月二十五日
この船は呪われているのだろうか? 夜中のうちに船長の姿が見えなくなった。皆、この世で最愛のものたちが葬られた海底へ、自らも身を投じたのだろうと深く悲しんだ。風がいくらか強くなり、船は終日十ノットで帆走している。
■十月二十七日、二十八日及び二十九日
依然として微風が続いている。特にここに書くことは何もない。
■十月三十日
夜、水夫から
「船倉に保管していた宝物箱について、船底にビルジ水が溜まってきているため物置部屋に移動させたが、少し濡らしてしまったかもしれず申し訳ない」
との報告を受ける。しかし積荷の宝物箱など私には心当たりがない。そのことを水夫に言うと、確かにゴアリングから、我が師の所有物なので丁重に扱うように、と厳命されたとのことである。明日そのことについてゴアリングに改める予定。



手帳の日誌はここで終わっています。





やっぱり積荷の宝箱が原因か!





しかも黒幕はゴアリングみたいね。師匠には秘密にして危険な宝箱を持ち込んだっぽい?





これ……たぶんハバククって人も犠牲に……





とにかく、物置部屋に行く必要があるな





それでは調理部屋の昇降口から下層の物置部屋に移動しますね。





物置部屋は様々な積荷と食料が並び、それらは粗末な板の隔壁で仕切られています。
先ほどの浸水した船倉よりも高い位置にあり、また扉によって仕切られているためこの部屋は床から20センチほどの浸水しかありません。
そして部屋の奥、旗や予備の帆布が散らかっている隅に、粗布でくるまれた箱が柱に縛り付けられて置かれています。





とりあえず箱か





慎重に調べる!
2d6 = [3,6] = 9





ラフィーナさんが見た限りでは箱は厳重に固定されているものの、鍵などが掛かっている様子はありません。
力尽くで縄や粗布を取り除けば難なく開けられることでしょう。





じゃあ、開けるね?





気をつけて……





えーいっ!





ではラフィーナさんが箱を開けます。しかし、箱には何も入っていません。





何もない? マジで?





また、箱の内部は濡れており、しかも普通の水より粘性が高く感じられます。





また、べたべた……





船長の部屋にあったものと同じだな。水系の魔法か?





うーん、そんな魔法あったかな?





これ以外に調べられるものはないのか?





そうですね。探索含めてこの部屋で得られる情報は以上です。





なら、砲列甲板に戻って客室を調べよう





そう、だね……魔術師さんと、その弟子の部屋になら何かあるかも……


